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フィリピン大学No.1バスケ選手があえて日本の“地方チーム”を選んだ理由…Bリーグ「アジア特別枠」とは
text by
青木崇Takashi Aoki
photograph byTristan Tamayo
posted2020/09/27 17:00
来日に備えてフィリピンでワークアウトに励むラベナ。フィリピンのインカレにあたるUAAP選手権で3年連続MVPに輝いた大学No.1プレーヤーだ
アジア特別枠によるマーケティング側面
Bリーグのアジア特別枠はラベナだけでなく、多くのアジアの選手たちにとっても飛躍するチャンスとなる。創設から4年で著しく成長を遂げたという点でもBリーグの認知度は世界的に上がっており、「僕のような選手にとって国内だけでなく、アジアの国々で能力を発揮できる扉が開いたのは間違いない。多くの選手たちに刺激を与えると思う」とラベナも話す。
アジア特別枠によるマーケティングという部分でも、ラベナはデビュー前から三遠に大きなインパクトを与えている。化粧品メーカーのマンダムがチームのメインスポンサーとなると同時に、「ギャツビー・グローバル・チャレンジャーズ」のプロジェクトアンバサダーにラベナが就任。このプロジェクトはアジア12の国と地域で展開する同メーカーのブランド「ギャツビー」が、若手スポーツ選手とともにアジアの人たちを勇気や活力を与えるというもの。三遠がアウェー時に着用するユニフォームには、「EMPOWER ASIA」(アジアを元気に!)というフレーズが入る。
もちろん、バスケットボールが大好きな日本在住のフィリピン人たちが、ラベナのプレーを観ようとアリーナに駆けつけるという効果も今後出てくると期待される。三遠ネオフェニックスはさらに、チームの魅力をSNSで発信する特命大使として、フィリピンの首都マニラを拠点にユーチューバーや俳優、歌手として活躍し“フィリピンで最も有名な日本人”と言われるFumiyaを起用することも発表している。今後ラベナがコート上で活躍するシーンが多くなれば、Bリーグがフィリピン向けにゲーム映像のライブ配信を行うことも十分考えられるだろう。
コロナ禍で9月24日時点でまだ来日できていないため、ラベナは10月3日に浜松アリーナで行われる千葉ジェッツとの開幕戦には出られないだろう。来日後2週間の隔離を経てのチーム合流ということを考慮すれば、彼のBリーグデビューは早くても第4節のホームゲーム、信州ブレイブウォリアーズ戦あたりになるのではないだろうか。もしそうなれば、同じアジア特別枠で信州に入団したヤン・ジェミン(韓国)とのマッチアップが実現するかもしれない。
「日本でプレーできることにはとても感謝している」と語ったように、ラベナはBリーグでの新たなチャレンジを楽しみしている。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、フィリピンでは2度のロックダウンが敢行され、彼も限られたトレーニングしかできない状況に直面していた。来日後も、2週間は隔離という我慢の日々を過ごさなければならない。しかし、この状況から解き放たれたとき、コート上で躍動するフィリピンの新星を見られると期待しよう。もう少しの辛抱である。