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「大事なのは『過程』。フェイクはバレる」千葉ジェッツ大野HCが語るチーム作り
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byCHIBA JETS FUNABASHI/IKEMENKOHO
posted2020/09/27 11:50
千葉ジェッツふなばしの大野HCは勝利だけを目指さないことで勝利を手にしてきた
フェイクはバレる。勝てば何でも良いではない
普段の練習の空気が変わるというのは、試合を目指すための『過程』が変わることである。正しい『過程』を経て、『結果』につなげるという目指すべきチーム像に向かってチームは今、突き進んでいる。
「目指したいのはそこですよね。チームの調子は一定ではないので、調子が落ちたときに、自分たちでどれだけ引き上げられるか。調子が上向くために何ができるのかを考えて、普段から行動していけるかどうかにかかっていますよね。大事なのはその『過程』ですよ、本当に。フェイクは、バレますから」
――クラブのことを大切にしている人、本当に愛している人には、実体が伴っているかどうかは見透かされてしまいます。
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「お金を払って試合を見てもらう以上、40分間で僕たちが伝えたいことを届けたいという想いが強いです。大事なのはそれプラス、勝つことです」
――「伝えたい」と関係しているのか、大野HCはしばしば、「見ていて面白いかどうか」と口にしますよね?
「僕らも、支えてくれている人たちも、勝てば嬉しい。その感覚はみんな一緒です。ただ、勝てば何でも良いのかというと、違うと思うんですよね」
――というと?
「喜んでもらうために必要なのは、勝つことと、面白いと思ってもらえるバスケットをすることだと思っていて。僕のなかで面白いと思えるのは、ディフェンスにもインテンシティーがあって、速いペースのバスケットです。たぶん、人によって違うと思うんですけど、勝つことだけを求めるコーチもいますし」
ストーリーを感じてもらえるようなのを作りたい
――確かに「勝利こそ正義」という考えはあるかもしれません。ただ、ジェッツは誰よりも多く勝ってきたからリーグ観客動員のナンバーワンの座をつかんだ、というわけではないですよね。
「面白いと思ってもらえるかどうかも、大事な基準なので。以前からあるような企業体質のチームなら、『勝てば良い』となるかもしれない。でも、ジェッツは市民球団だという想いが僕は強いから。今は厳密な仕組みとしてはそうではなくても、マインドとしては、その想いは変わらないので。勝つことと、支えてくれる人たちが喜んでくれるバスケットをすること、両方を追い求めるべきだと考えています」
――喜んでもらうというのは?
「みなさんが胸を打たれるのは、どういうときか。応援しているチームが、本当に苦しんでいるところから這い上がるところとか、選手がボールを追いかけてコートを飛び出していくのを見たときですよね。ストーリーを感じてもらえるようなのを作りたいんです。例えば、(西村)文男だったら、以前はこんな風に(髪の毛をふわっと)やっていたのに、今では身体ごとコートの外に飛んでいくわけですよ。僕らはそこまでのストーリーを知っているから、泣きそうになる。『あの文男さんが、変わった』とか、『コートから飛び出してまで必死にボールを追いかけているんだ!』とか、心を動かしてくれるファンの人は絶対にいると思うんですよ」