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日本ラグビーの“大学文化”と代表の新旧交代 期待は明治大の「普通でない人」や頑丈な慶大の…
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/09/24 17:00
今季から主将を務める明治大・箸本。アタックだけでなく、献身的なディフェンスも魅力だ
ジャパン入りを望める若手は?
早稲田の2年、19歳のフランカー、相良昌彦も決戦の重要な場面でトライやターンオーバーをしてみせる。「180㎝・92㎏」は国際レベルではそれこそ小柄だ。ただし「決定的な仕事」はどんなチームにとっても普遍の価値を有する。
土壇場に揺るがぬのは「うまさ」より「たくましさ」である。慶應義塾大学3年のフランカー、177㎝の山本凱は根源的に頑丈だ。
明治の4年、SO/FBの山沢京平も身体の強靭がうまさに一貫性を与えている。
大学に入学していたら3年、パナソニックのフランカー/ナンバー8の福井翔大は東福岡高校から一直線にプロ入りした。強くてうまくて強い世界の顔の集うクラブでもまれる毎日、名を挙げないのは明らかに間違いである。
現役の学生では近畿大学3年の無敵の左プロップ、紙森陽太の「スクラム負け知らず」の経歴が光を放つ。特別な力を持つ者には、数年先を見すえつつ、代表レベルで充足(通じる)と適度の悔しさ(まだ足らない)を経験させながら世界へ導く。
天理大学4年で副主将のシオサイア・フィフィタはサンウルブズの13番、14番として実戦を積み、そんな軌道に乗ろうとしている。
大学文化に焦りはあるが、良さもある
海外の強豪国では優れたティーンエイジャーがプロのアカデミーに集約される。すると日本の「大学をはさむ」流れをついもどかしく感じる。
焦りは禁物だ。日本の大学ラグビーにもよさはある。18歳でそれなりに広く注目される試合に出場、キャプテンなら21、22歳で集団を統率する。さまざまな背景の部員のみならず卒業生や大学当局とも責任ある立場で接する。いわば小さな社会を生きる。
卒業という年限が「はい。リセット」を許さない。ひとつのシーズンにかける。すると「燃えて突き詰める」態度は身につく。これが卒業後も役に立つ。
この話になるたびに自動的に思い浮かぶシーンがある。
米国やヨーロッパの映画によくある。幼い子が親とは別の寒々とした部屋のベッドにひとりで寝る。
ああいうふうにずっと暮らしてきた20歳は、入社式(入園式にも入学式にもあらず)に親が出席したりする国の同年齢とはきっと違う。どちらがよいということではなく大人になる道筋は文化を反映する。
心身の成熟に個人差があるように、日本のラグビーには、大学という小社会の段階を踏むのが合っている気もする。