マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
吉田輝星を思い出させる逸材、190cm超え“栃木の右腕”……「ドラフト最注目の高校球児10人」とは?
posted2020/09/18 11:31
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
史上初めて行われた「プロ志望高校生合同練習会」から10日あまりが経った。
この間、参加した高校球児の数人に話を聞く機会を得たが、その誰もが、「合同練習会があったおかげで、やるだけのことはやった……と区切りがついて、気持ちが落ち着いた。参加していなかったら、今頃はもっとイライラして、焦っていたと思う」。そんな心境を語ってくれた。
甲子園球場に西日本の球児77人、東京ドームに東日本の選手41人が参加して、2回に分けて行われた「合同練習会」。
10日間経って、まだ印象に残っていれば、彼らがこちらの記憶に刻み付けていったパフォーマンスは、きっと「本物」なのだろう。
甲子園、東京ドーム――2回のオーディションの中から、私が「なんだ、こいつは!」と目をむいた選手を10人、ここで紹介したい。
(1)シャピロ・マシュー・一郎(投手・國學院栃木)
もちろん一番びっくりしたのは、「ドラフト1位候補」の山下舜平大(福岡大大濠)だが、彼については、すでにこの連載でも取り上げたこともあり、ここでは「別格」としたい。
山下舜平大と同様、5年後が想像できない「未完の大器」なら、シャピロ・マシュー・一郎(投手・國學院栃木・191cm93kg・右投右打)を、まずイの一番に挙げたい。
サイズだけなら、山下舜平大よりデカい。なのに、左ヒザを胸の高さまで上げても、上体が後傾も、前傾もしない。このボディバランスと体幹の強さは、あの佐々木朗希(現・千葉ロッテ)の大船渡高当時を思い出させる。
オーバーハンドで真上から豪快に投げ下ろして、145~147キロが立て続けにきまる。右打者の外角低めにもピシャリときめる。これで6月までは成長痛で投げられなかったというから驚いた。
速球とほぼ同じ腕の振りから、タテのスライダーも低めに集めて、実戦はキャリア不足のはずなのに、「大舞台」にひるみも見られない。素材は間違いなく一級品。育成……? いやいや、とんでもない。支配下ドラフトでなきゃ獲れない大器だろう。
(2)桑原秀侍(投手・神村学園)
未完の大器の「最大値」の荒々しい魅力なら、桑原秀侍(投手・神村学園・175cm80キロ・右投右打)も負けてはいない。
シャピロ同様、左ヒザを顔の高さほどまで上げて、やはりしっかりと軸足で立てている。そこからグッと腰を入れて右腕を猛烈にぶん投げる。ボールと一緒に、腕までふっ飛んで行きそうな勢いだ。
そんな強引な投げっぷりなのに140キロ後半の速球が、きちんとストライクゾーンにきまるから驚いた。
この日、私は、たまたまテレビ中継の放送席に座っていた。目の前のモニターでスローの映像を見ると、桑原が投げるリリースの瞬間、彼の人指し指、中指……ボールの上にかかる2本の指が、きれいに真上からボールの縫い目にかかっているのが確認できた。
たいていの投手は、ほんの少しどちらかに傾いて、わずかにスライダー回転になったり、シュート回転になったり……それが普通なのだが、桑原投手のこの指のかかりなら、そりゃあ猛烈なバックスピンがかかるだろう。
左打者の内角低めに147キロをピシャリときめて、右打者の胸元にも148キロをドーンと。速球と同じ腕の振りから、103キロのチェンジアップに120キロのフォークも披露して、ものすごいバイタリティと驚きの精度を兼備した桑原秀侍の痛快な投げっぷりだった。