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吉田輝星を思い出させる逸材、190cm超え“栃木の右腕”……「ドラフト最注目の高校球児10人」とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
posted2020/09/18 11:31
今年のドラフト注目の(1)シャピロ・マシュー・一郎(投手・國學院栃木・191cm93kg・右投右打)
(3)豆田泰志(投手・浦和実業)
パワーと精度なら一歩もひけをとっていなかったのは、豆田泰志(投手・浦和実業・173cm80kg・右投右打)だ。
この投手のピッチングは、この夏の「独自大会」で一度見ている。
オーバーハンドから投げ下ろしているのに、アンダーハンドが投げるようなホップして見える速球。ものすごいバックスピンなんだろうなぁと思ったら、計測した回転数は「2400」(2300でプロレベル)と聞いて驚いた。
その「2400回転」が、143~147キロで、右打者の外角低めに続けられるのがすばらしい。夏の甲子園で快進撃を見せた時の金足農・吉田輝星(現・日本ハム)を思い出した。
タテのスライダーとカーブにきちんとそれぞれの軌道を作れて、ツーシーム、スプリットでもカウントを作れる。名前は「豆田」で173cmでも角度を作れる投球フォームと、<心境>が表情に出ないフラットな内面。浦和実業・豆田泰志、「ピッチング」を作れるヤツだ。
(4)太田大和(投手・山形中央)
本気で来てる選手は、表情と目ですぐわかる。
いい顔して投げてるなぁ……美しいと思えるほどの透明感をたたえた表情で打者に向かっていった太田大和(投手・山形中央・179cm76kg・左投左打)。サウスポーだ。
見せかけの威勢の良さなんかいらない。気負い過ぎず、恐れ過ぎず、外はクールに、内は熱く……それが「ピッチャー」だ。
半身の姿勢で踏み込んで、体の左右を一気に切り返しながら鋭く腕を振って……左腕にしか投げられないクロスファイアーが、右打者の体の裏側にまで入り込むように見える。
130キロ後半でも打者がまるで手が出ないのは、リリースが見えていないから。「杉内俊哉(元・ソフトバンク)の球筋」だ。
速球以上に打者がタイミングをつかめていないスライダーやチェンジアップがあるのに、ひたすらクロスファイアーで攻める。
オレのこのボールを見てください! 何かを背負ってドームにやって来た……そんな<覚悟>が表情にも、投げっぷりにも漂っている。
「150キロ」だけが見る者を驚かすわけじゃない。「打ちにくさ」という説得力も、オーディションでは大切な要素だ。そして、渾身の腕の振りに込められた「志」。こういうヤツが出てくるんだ。