“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
内田篤人のコーチ姿を見てよみがえった14年前の記憶 「U-19日本代表の仲間は本当に大切な存在」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/09/17 08:00
U-19日本代表合宿にロールモデルコーチとして参加した内田篤人。
U-20W杯出場権を獲得したサウジ戦
AFCユース選手権(現U-19選手権)を迎えた10月末。鹿島がナビスコカップを勝ち進んだことで日程のバッティングが発生した。もちろん、鹿島愛が強い彼にとってはタイトルの懸かる大事な試合である。一方で同年代の仲間たちと一緒に世界を目指したいという気持ちも強い。
「鹿島も大事だし、U-19日本代表も大事。本当に迷っています……」
当時、18歳の内田にとっては難しい選択だっただろう。悩む姿に、鹿島側も内田の思いを汲んで、インドへ送り出してくれた。
インドでは予想通りの劣悪なピッチコンディションの連続だったが、内田はタイ遠征の時のように、仲間たちとのプレーを心から楽しみ、勝利のためにユニフォームを泥だらけにしながら戦っていた。
特にU-20W杯出場権が懸かった準々決勝のサウジアラビア戦はまさに死闘だった。
開始直後に豪雨に見舞われ、さらに試合途中で照明の一部が停電。内田は先制点の起点となるも、その後、チームは不可解な判定によるPKで追いつかれる苦しい試合展開となった。それでもGK林、DF槙野らと共に身体を張った守備で相手の猛攻を凌ぐと、試合終了間際にFW青木孝太がこぼれ球を豪快に押し込んだ。
喜びを爆発させる選手たち。ここでは内田も全身で喜びを表現していた。U-19日本代表の7大会連続のU-20W杯出場権獲得。さらにAFCユース選手権で決勝進出を果たすなど、歴史の1ページを刻んだ(決勝で北朝鮮にPK戦の末に敗れて準優勝)。
ゴールパフォーマンスは「見ているのは楽しい」
そして、1年後のU-20W杯カナダ大会。ゴールごとに飛び出すパフォーマンスが話題を呼び、内田たちは「調子乗り世代」と名付けられた。パフォーマンスだけに留まらず、強豪揃いのグループリーグを2勝1分けの無敗で1位で突破。決勝トーナメント初戦のチェコ戦はPK戦の末に敗れ、ベスト16という結果に終わったが、この躍進は現在でも、多くのサッカーファンの記憶に残っているだろう。
盛り上がりを見せたU-20W杯でも、内田は相変わらずの絶妙な立ち位置を保っていた。グループリーグ初戦のスコットランド戦の後に「あんなパフォーマンスをするなんて知らなかったもん(笑)。そもそも、俺は恥ずかしいし、もしあの後失点してしまったら嫌じゃないですか。俺は点を取って喜んだ後にすぐに失点した嫌な思い出があるから」と内田節。
「でも、ああいうのを見ているのは楽しいよね。何せ高校生の時からずっとやっているメンバーだからね。個々の特徴はしっかりと分かるし、チームワークは抜群。俺はこのチームがかなり好きだから、もっともっとこの仲間でサッカーをやりたいね。でもパフォーマンスには参加しませんけどね(笑)」
内田にとって、あの時間を共有したことは大きな財産になっているのだろう。だからこそ、現在のU-19日本代表にも、同じ想いを味わってほしい。経験だけではなく、日本代表や仲間に対する熱い想いを後輩たちに植え付けることが、今回の最大のミッションだったのかもしれない。