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大久保嘉人のギラギラ感が弱い 「気持ちが切れたらいつでもやめる覚悟」はどうなるのか
posted2020/09/17 11:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
この日は、久しぶりに大久保節が聞けると思っていた。
対戦相手のザスパクサツ群馬は最下位、失点は34点でリーグ最多。隙を窺い、ゴールを狙うチャンスは十分にある。だが、前半開始早々、いきなりGKにチャージして、イエローカードをもらった。それは、焦りからなのか、得点への意欲なのか。
しょっぱなからなんかいつもと違うぞ、大久保嘉人。そう思った
怪我から復帰も、未だ「得点ゼロ」
「おもしろいサッカーをするし、あの攻撃的な中でプレーするのは楽しみ」
東京ヴェルディに移籍した大久保はそう語った。実際、ヴェルディでのプレーは非常に楽しみだった。
大久保は、周囲のレベルが高いほど、その個性が際立つ。川崎F時代は、中村憲剛ら技術の高い選手が多数いるなか、彼らと絶妙な絡みを見せ、点を取っていた。ヴェルディはスタイルこそ癖が強いが、みな技術が高く、パスを繋いで崩すサッカーだ。それは、間違いなく大久保の好きなスタイルだったからだ。
だが、思いの外、苦しんでいる。
コロナ禍の中、大久保は練習中に故障し、8月16日の水戸戦で復帰。その後、29日の京都戦からスタメンに復帰したが、まだゴールがゼロだ。昨シーズン、プレーした磐田でのシーズン初得点は33節の名古屋戦で、それが昨年唯一のゴールだった。ここまで初得点が遅くなることはないだろうが、今年は独特のゴール感覚に加え、試合勘も故障でいまひとつ。徐々にコンディションを戻すために、永井秀樹監督はこれまでスタメンでは出場時間を60分程に設定し、無理のない調整をさせてきた。
そうして、迎えた群馬戦、そろそろ初ゴールという機運が高まっていた。実際、得点の匂いは序盤から漂っていた。
「PKはいつも外すことしか考えていない」
前半5分、いきなりチャンスが巡ってきた。藤田譲瑠チマのクロスを大久保がヘディングシュート。決定的なシーンだったが、GKの好セーブにあい、クリアーされた。ただ、それを若狭大志が詰めてヴェルディが先制した。ゴールにつながるプレーにはなった。
いつもの大久保なら決めていただろう。ここで入らないのが、今の大久保の状態を表しているようで、なんとももどかしかった。
1点取るとFWは変わる。使い古された言葉だが、真実でもある。
「FWは、点を取る感覚をつかみたいので、できるだけはやく1点取るにこしたことはない。1点取れば、プレーにゴール感覚が追いついていく」
大久保は、よくそう言っていた。それだけに早くヴェルディで初ゴールを、と思うのだが、ゴールが遠い。後半8分にシュートを放つも相手DFに当たり、コースが変わって外れてしまった。
後半12分、この試合、最大のチャンスが大久保に訪れた。