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ポルトガル移籍・藤本寛也の代理人に聞くコロナ禍の欧州移籍市場、日本人の相場観
posted2020/09/19 11:40
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE
またひとり、東京五輪世代屈指のタレントが海を渡った。
8月5日、東京ヴェルディは藤本寛也がポルトガルリーグ1部プリメイラ・リーガのジル・ヴィセンテFCに期限付き移籍すると発表。交渉を成立させたのは、世界各国に広いネットワークを持つ大手エージェンシー、ベースサッカーの富永雄輔氏(JFA登録仲介人)だ。
藤本については、およそ1年半前から欧州クラブの関心が高まっていたという。
契機となったのが、2019年5月に開催されるFIFA U-20ワールドカップ ポーランドに向け、同年3月に実施されたU-20日本代表のヨーロッパ遠征。U-20日本代表は、ポーランドでU-20ポーランド代表と、スペインでU-20アルゼンチン代表、U-20アメリカ代表とトレーニングマッチを行っている。
「スペインでの合宿にはヨーロッパの各クラブのスカウトが訪れ、弊社のエージェントも足を運んでいました。ロンドンの本社に日本人選手のレポートが届き、常に名前が上がったのが藤本寛也。スカウトの人たちも寛也のプレーに、かなり驚いたようですね。あいつは何者だと。あの合宿が彼の運命を変えた」(富永氏)
U-20W杯での活躍後、全治8カ月の重傷
むろん、足りない部分はあった。守備は軽く、スピード、フィジカルの強さも特筆すべきものはない。だが、それ以上に独特のボールの持ち方から繰り出される高精度のキック、視野の広さ、スペースの見つけ方がヨーロッパの目利きの琴線に触れた。
本番のU-20W杯、藤本はグループステージのメキシコ戦で2アシストをマークするなどの活躍を見せ、その評価は決定的なものとなる。
そして、最初にオファーが届いたのは昨年8月。ジル・ヴィセンテとは別のポルトガルのクラブだった。
ところが、直後の8月11日、J2第27節の鹿児島ユナイテッドFC戦、ドリブルを仕掛けた藤本はピッチに崩れ落ちるように倒れ、担架に乗せられてピッチから退く。診断結果は右ひざ前十字靭帯損傷、および半月板損傷により全治約8カ月の重傷だった。