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漁府輝羽が“最後の甲子園”で輝いた理由。「当たり前じゃない」ことはコロナ以前から知っていた。

posted2020/09/05 08:00

 
漁府輝羽が“最後の甲子園”で輝いた理由。「当たり前じゃない」ことはコロナ以前から知っていた。<Number Web> photograph by Yu Takagi

合同練習会で存在感を放ったおかやま山陽3年・漁府輝羽。堤尚彦監督の指導のもと、自主性を身につけてチャンスを生かした。

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高木遊

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 8月29、30 日に行われた「プロ志望高校生合同練習会」。西日本会場となった甲子園球場を“憧れの地”と話す、おかやま山陽高校のスラッガー・漁府輝羽(ぎょふ・こうは)はそのパワーを遺憾無く発揮した。

 高校通算24本塁打。数字だけを見れば歴代のスラッガーたちに見劣りするが、新型コロナウイルスの感染拡大により、春季大会だけでなく、練習試合が組まれる3〜5月にほとんど対外試合ができなかったことを差し引いて考えるべきである。同じようにスカウトに見てもらうチャンスの場も失われた高校生がいることから、今回の練習会は日本高等学校野球連盟と日本野球機構(NPB)の共催という形で史上初めて行われた。

 そのラストチャンスの舞台。漁府は「とにかく甲子園は大きくて、ワクワクしました」との言葉通り躍動した。

放物線を描く打球、強肩を生かした送球。

 1日目のフリー打撃では、打撃投手のストレートと変化球を出すマシンの2箇所を3人1組で回す。それが1組6分間だが、1人あたりにするともっと少なくなる。その限られた中で、漁府は木製バットを振り抜き、打球は放物線を描いてレフトスタンドに飛び込んだ。さらにその後のシートノックでも右翼手としてハツラツと動き、もうひとつの武器である強肩で好送球を見せた。

 練習後に行われた取材では「緊張もありましたが、聖地である甲子園球場で楽しくできました。自分の持ち味がいつも以上に出せました」と笑顔を見せた。

 続く2日目も漁府はパワーを見せつける。

 前日のフリー打撃もそうであったが木製バットで挑戦する選手が多かったため、力強く遠くに飛ぶ打球を放った者は多くはなかった。ましてや2日目は初見の投手とカウント1ボール1ストライクからの勝負となるシート打撃だ。

 漁府も1打席目は三振、2打席目は四球とアピールできなかったが、最終の第3打席で真価を発揮した。享栄高校の大型左腕・上田洸太朗が2ボール1ストライクから投じた中に甘く入った球を見逃さずに振り抜くと、打球はまたも放物線を描いてレフト後方へ。惜しくも本塁打とはならなかったがフェンス直撃の二塁打となった。

【次ページ】 率いるのはジンバブエ代表監督。

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