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「サッカー革新のリーダーである」CL決勝でトルシエが感じた、バイエルンの強さ。 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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posted2020/09/05 18:05

「サッカー革新のリーダーである」CL決勝でトルシエが感じた、バイエルンの強さ。<Number Web> photograph by Getty Images

コロナ禍のため変則日程となった2019-20シーズンのCLを制したのはバイエルンだった。

 PSGにも勝機はあったが、PSGにとって決勝はショービジネスの要素も強かった。ネイマールやムバッペの爆発を期待するのは別のメンタリティーだ。バイエルンのような成熟をパリは持ち合わせてはいない。バイエルンは経験豊かなマシンだ。向こう受けする派手なプレーは何もない。全員が自分の役割をよくわきまえた戦士で、強固なディシプリンと厳格さがそこにはあった。もちろん選手個々の能力が高く、チーム全体のバランスもよく取れている。90分を通して彼らは勝利に値した。バイエルンならば、PSGとは違って先制されても追いつくことができただろう。

――GKのノイアーも鉄壁で、カウンターのチャンスも決定的にはならなかった。

トルシエ GKは素晴らしく強固で、PSGのナバスも決して悪くなかった。どちらも最高クラスのプレーを披露した。

サッカー革新のリーダーは「バイエルン」。

――バイエルン監督のフリックは長くドイツ代表のコーチを務め、そのプレースタイルは代表と同じ縦に速いスタイルです。これが現在のヨーロッパの主流といえるのでしょうか?

トルシエ そう思う。ボールを保持してパスを回すバルセロナやマンチェスター・シティ(MC)の敗北は、スタイルの混合による進化を示している。もちろんコレクティブなプレーもポゼッションも必要だ。だが一方で縦のプレーも必要だしプロフォンダーも必要だ。そのためにはそれに適した選手――ニャブリやコマンのようにプロフォンダーを引き出せる選手が不可欠で、ムバッペもそのひとりだが、昨日のムバッペはボールを足元におさめてドリブル突破ばかりを図り、ボールを引き出す動きはほとんどなかった。

 サッカー革新の可能性は大いにある。バイエルンこそそのリーダーだ。ポゼッションと縦のスピードのバランスを追求しながら、バイエルンは戦略革新のアイディアを提供している。そのために必要なスピードのある選手、1対1で勝てる選手を育成し、スカウティングにより獲得する。久保建英もそうした選手のひとりで、トップスピードで相手ブロックの中に入っていき違いを作り出せる。今日のサッカーはその方向での革新が進んでいる。MCやバルセロナの敗北を見る限り、そうした方向性を見て取ることができる。

――PSGがヨーロッパのタイトルを獲得するためにはスタイルの変革が必要でしょうか?

【次ページ】 フランスと世界の差は縮まった。

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