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「3強」ビワハヤヒデ、ナリタタイシンは老衰で……。30歳、ウイニングチケットはどうしている?
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byKei Taniguchi
posted2020/09/03 18:00
北海道で余生を過ごすウイニングチケット。多くの馬を看取ってきた太田氏はその変わらぬ馬体に驚く(2019年3月撮影)。
寝転がりも億劫になるのだが。
ナリタタイシン、ビワハヤヒデが今年、相次いで亡くなり、牧場の方には様子を心配するファンから多くの声が寄せられているという。しかし、太田の話を聞く限り、チケットは相変わらず元気そうでなによりだ。
晩年になると、馬も自分の体の状態を理解し、極力走らない、無理な動きをしないといったように自身の動きをセーブする傾向がある。一度地面に寝転がると次に立つのが億劫ゆえに寝なくなることも多々あるというが、チケットの場合は自分の体を労わる動きや弱っている箇所をかばうような行動はまだ見せない。
むしろ、「もう少し自分の年齢を考えて走って欲しいなとこちらがひやひやするぐらい、バタバタと走っているんですよ。うちにいる同じ功労馬のタイムパラドックス(22歳)の方がよほど年寄りじみてます(笑)」。
体もそして気持ちもまだまだ若い。
「最後」まで世話をする仕事。
30歳になっても元気なチケットの姿には太田も日々驚かされることばかりだという。
「私の経験上、30歳でこれほど元気な馬は見たことがないですし、一般的にもこんなに元気な30歳の馬にはなかなかお目にかかれないと思います。ですから、何が要因でここまで元気でいられるのか、勉強になることはとても多いですね。今、同じ施設で余生を送るタイムパラドックスやスズカフェニックス(18歳)も、同じようにチケットに続いてもらいたいなと思っています」
チケットが余生を送るAERUは観光施設を兼ねた牧場で、太田は乗馬課に在籍し、乗馬インストラクターやトレッキングなど、馬を通した接客業を行い、乗用馬やチケットら3頭の功労馬の世話も担っている。
高校の頃から馬の世界で働きたいと考え、卒業後、馬のことを学べる専門学校で知識を得て、その後、この世界を知るきっかけになった日高の乗馬施設で働き始めた。その後、競走馬がいる牧場も経験。馬を通して人との触れ合いができ、生き物を扱う以上、最後まで世話をする経験ができるAERUが自分に合っていると感じ、'13年から働き始めた。