多くの“看取り”を経験してきた。

　入社以来、乗馬インスタクターやトレッキングガイドとして活躍する傍ら、多くの馬と日々向き合い、時には“看取り”も経験した。

「ダイユウサクという馬が亡くなったときは、入社して日も浅かった頃の出来事だったので、乗馬課の責任者として入った自分にとっては大きな出来事でした。突然のことだったので心の準備もできておらず、当時は出来ることをしたつもりでしたが、“生前にもっとしてあげられることがあっただろう”と考えることも多々ありました。

　その後もニッポーテイオー、ヒシマサルを看取りましたが、亡くなった寂しさはもちろんのこと、それ以上に彼らから経験させてもらったことや勉強させてもらったことは非常に多く、感謝の気持ちが強いです」

「少しでも穏やかに、ストレスなく」

　高齢馬を扱っている以上、看取りは避けられない。遅かれ早かれ馬の死と向き合う場面は必ず訪れる。だからこそ、太田には常に心に留めていることがある。

「競走馬時代は体を酷使してきたと思うので、晩年の過ごし方を少しでも穏やかに、ストレスなく、最後までその馬らしくいられるような生活ができるように心がけています。看取る場面ではネガティブなことを考えてしまいがちですが、それまでのお世話の仕方次第では、後悔よりも『ありがとう』という気持ちが強く出てくるような、自分が行ってきたお世話が馬にとって間違っていなかったんだ、良かったんだと自信を持って言えるようなお世話が、より多くできていれば感謝の気持ちで看取れるのではないかと思っています。

　もちろん、現実的にはもっとこうしてあげればよかったと思ったり、うまくいかないこともあるんですけどね」

　だからこそ、チケットにも日々、「らしく」生きてもらいたいと切に願っている。

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