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「遠山-葛西-遠山-葛西」阪神タイガース“暗黒時代”を支えた伝説の継投…崖っぷち左腕が野村克也に学んだ“奇策”の意味「巨人をチームとして見るな」
posted2025/04/30 17:03

阪神再入団後、サイドスローに転向して貴重な中継ぎとして活躍した遠山奨志(1999年)
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
JIJI PRESS
遠山奬志は今、京都廣學館高校硬式野球部の特任投手コーチ兼チーム強化アドバイザーを務めている。
今年4月に着任したばかりということもあり、少し離れたところから練習を見つめることも多い。見られていることに気づいていない選手が、ふっと気を抜く瞬間を見逃さない。
「遠くから見ているほうが、生徒の素が出るんですよ。あとから『お前、さっきふざけてたやろ』と言ったら、よう見てるな、と思うじゃないですか。近くで見ていたら、みんなやるんです。でも見られていないところでやるのも大事なんでね」
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現役時代、数多くの個性的な監督のもとでプレーした経験が、指導者となった今に活きているという。
「野村(克也)さんや星野(仙一)さん、他にもいろいろな名監督と仕事することができて、僕は本当についていたと思います。野村さんには野球の“や”から教わりました。野村さんのミーティングはものすごく財産になりました」
野村克也と星野仙一の共通点
野村には、巨人のような強力打線に対して、「相手をチームとして見るな」と口酸っぱく言われたという。
「バッターを一人ずつ見ろと。チームとして見たらものすごいけども、バッターを一人ずつデータで分析していけば、必ず弱点がある。そこをどれだけ突けるか、という考え方をすべきだと。一人一殺、それの積み重ねだということです」
野村と星野は対照的な監督だと言われることもあるが、遠山は否定する。
「野村さんは、聞きに来たら答えるというタイプ。星野さんは、自ら行ってああやこうやと言うタイプ。そういうふうに質が違うだけで、中身は2人とも熱い。野村さんはああいう人、星野さんはああいう人、と色付けするのは周りの声、第三者であって、中身は一緒です。やっぱりプロとして、勝つ野球を求める。勝つためには何でも使うということを形としてやっていた監督だと思います」
勝つためになりふり構わない。その一つが、野村監督が阪神で2000年に球場を沸かせた「遠山・葛西スペシャル」だった。