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藤川球児や村田修一、西岡剛に
又吉克樹もいた独立Lの魅力指南。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKou Hiroo

posted2020/07/13 07:00

藤川球児や村田修一、西岡剛に又吉克樹もいた独立Lの魅力指南。<Number Web> photograph by Kou Hiroo

BCリーグ栃木でプレーした経験のある村田修一のように、NPBで実績を残した名選手が独立リーグに、というケースも増えている。

スカウトが重視するのは「年齢」。

 毎年10月になると、独立リーグの選手たちの間では「調査書来たか?」が合言葉のようになる。

 NPB球団は独立リーグ球団にドラフト候補の選手の調査を依頼する書類を送付するのだ。この調査書が来た選手は、ドラフトにかかる可能性があるのだ。

 独立リーガーたちは「調査書」のために野球をしているといってもよい。

 新人選手と話をしていると「今年中に絶対に調査書をもらう」という選手は見込みがあると感じる。「大学に行ったつもりで、4年くらいでドラフトにかかりたい」という選手は、なかなかうまくいかない。

 独立リーグの試合にはNPBのスカウトが来ているが、彼らが重要視しているのは「技術」、「能力」に加えて「年齢」だ。

「同じポテンシャルなら、23歳の選手より19歳の選手をとるよ。伸びしろが違うから」

 あるスカウトから、こう聞いたことがある。また「春に見た時と、秋に見た時で見違えるような成長をしている選手でないと無理だね。プロではさらに伸びないといけないから」とも。こういう話を頭に入れて独立リーグを見ると、いろんなことが見えてくるのだ。

 なお、独立リーグからNPBに選手がドラフトで移籍すると、契約金、初年度年俸の一部が独立リーグ球団に入ることになっている。独立リーグにとって「NPBへの選手の輩出」は、ビジネスでもあるのだ。

社会人野球に変わる受け皿として。

 筆者は十数年見続けてきて、独立リーグは今や日本の野球界に欠かせない存在だと確信している。

 従来、「プロ野球未満」の野球選手の受け皿は社会人野球だった。企業丸抱えのチームで、会社から給料をもらいながら福利厚生の一環として「会社の一体感を醸成する」ために野球をする社会人野球は、日本独特のスタイルだ。高度経済成長期には我も我もと大企業が野球部を作ったものだ。

 しかし平成以降、企業の経営方針が変化し、社会人野球の存在意義が揺らいでいる。会社丸抱えのチームから、運営費の一部を会社がサポートするだけの「クラブチーム」が増えているのだ。選手たちの立場は経済的にも身分的にも不安定になっている。

 そういう選手の選択肢として「独立リーグ」が存在する。当初は四国の4球団だったが、今やBCの12球団、関西の4球団、北海道の2球団、沖縄の1球団を合わせ23球団もある(日本独立リーグ野球機構に加盟、準加盟しているのは17球団)。独立リーグがプロ野球未満の選手たちの活躍、そしてアピールの場となっているのだ。

【次ページ】 新型コロナ禍はもちろん大変だが。

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