酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
藤川球児や村田修一、西岡剛に
又吉克樹もいた独立Lの魅力指南。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2020/07/13 07:00
BCリーグ栃木でプレーした経験のある村田修一のように、NPBで実績を残した名選手が独立リーグに、というケースも増えている。
大隣、河原といった実績ある投手も。
ソフトバンクのエースだった大隣憲司は、2013年難病黄色靭帯骨化症の手術をした。翌2014年には三軍で投げるようになった。ソフトバンク三軍は四国アイランドリーグplusと交流戦を行っている。徳島インディゴソックスとの試合でマウンドに上がった大隣は、130kmそこそこの球速ながら、打者を寄せ付けず、悠々と予定投球回を投げ切った。「トッププロの投球術とはこういうものだ」というのを見せつけた形だった。
巨人、西武などで活躍した河原純一は40歳になってから、四国の愛媛マンダリンパイレーツにやってきた。試合前のウォームアップでもゆっくり体を動かしていたし、ベテランだなと感じさせた。
マウンドでも球速はせいぜい130km程度だったが、それでも若い独立リーガーは打ち損じを繰り返した。緩急を巧みに使い、打者の打ち気をそらしていたが、格の違いをはっきり感じた。
独立リーグの投手に足りないのは、球速や制球力だけではない。いわゆる投球技術。打者の弱点を突くような投球ができないと、上のレベルでは通用しないのだ。
河原は引退後も愛媛の監督を務めている。筆者は何度か話を聞いたが、選手たちに「プロ意識とは何か」を教えていると語った。
村田修一が見せた人間力の高さ。
2000本安打まであと135本に迫りながら巨人を自由契約になった村田修一が、夫人の故郷にあるルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに入団したのは、2018年のことだった。栃木は2017年からリーグに参戦した新興球団だったが、村田人気で本拠地には多数の観客が詰めかけた。
村田は球団が行う地域イベントにも積極的に参加していた。14本塁打62打点、打率.343と成績も素晴らしかったが、筆者が感銘を受けたのは打席での態度だった。ゆったり構えてきわどいボールを余裕をもって見逃し、ゆっくりと一塁に歩いていた。また投手がピンチを迎えると率先してマウンドに行き、アドバイスをしていた。
彼がNPBで成功したのは能力があっただけでなく、人間力も素晴らしかったのだろうと思わせた。