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カープファンに恋する情熱を学べ。
懐かしくて新しい「実家」のよう。

posted2020/07/13 11:30

 
カープファンに恋する情熱を学べ。懐かしくて新しい「実家」のよう。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

試合開催日、広島駅からマツダスタジアムに向かうカープロードはファンで埋まる。この日々が戻るのはいつになるだろうか。

text by

西澤千央

西澤千央Chihiro Nishizawa

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photograph by

Atsushi Kondo

新型コロナウィルスの影響が続くなか、NumberWebでは、『Sports Graphic Number』の過去の記事から、「こんなときだからこそ読んで欲しい」と思う記事を特別公開します! 今回は982号(2019年7月11日発売)に掲載された「カープファンに恋する情熱を学べ。」をお届けします。ベイスターズびいきのライターが、カープファンに教えを乞う旅で感じたこととは。

 ずっと友だちだと思ってた。テスト前「お前、勉強した?」「やばい、なんもやってねえ」って笑い合って、2人で赤点だったじゃん。マラソン大会で「たりいからテキトーにやろうぜ」「だよな」って、最後尾トコトコ走ってたじゃん。それがどういうことなのか。気づけば友の成績は学年トップ、マラソン大会はぶっちぎりで優勝。それだけじゃない。「彼女とか彼氏とかめんどくせえよな」って言い合ってたのに、今じゃどこ行ってもワーキャーのモテモテだ。

 これはカープである。ベイスターズにとっての、カープである。

 いつの間にか遠くに行ってしまった「友」、カープ。勝手に友だちだと思っていたカープファンは、今何を思い、どんな未来を見ているのだろうか。教えてほしい、それはいつかベイスターズファンが辿るかもしれない道だから。

 広島に来るのは、3年ぶりだ。ベイスターズの初めてのCS進出を見守るためにあの日降り立った広島駅と、今新幹線の改札を抜けて見える光景は全くの別物で驚く。2025年には地上20階建て、延べ床面積は約11万1000平方mにのぼる巨大な駅ビルも完成するらしい。駅前にこんな高層マンションが……え、蔦屋家電まであるじゃん!

 かつての「友」のリア充っぷリを見せつけられて、私は完全に気後れしていた。キョロキョロしながら路面電車に乗り、最初の目的地へ。

「いつになったら優勝するんだろうか」

 1980年代、カープ情報を発信し続けてきた雑誌『月刊カープファン』。元プロ野球選手、故・橋本敬包氏が引退後に創刊したこの雑誌は、休刊後も『Cafe&Restaurant カープファン』として市内中心部にその名を残している。

「このビルの上の階に編集部があって、1階を喫茶店にしたんです」

 こう話すのはマダムの橋本紀子さん。

「一番忙しかった時で、25人くらい編集部員の方がいらして」というが、これはNumber編集部よりずっと多い。ファン垂涎のグッズや写真が所狭しと飾られる店内で、私が一番気になったのは入口に置かれたノートだった。この聖地を訪れたカープファンたちが各々の思いを記念に書き残している。

〈いつになったら優勝するんだろうか〉

〈早く優勝するところが見たい〉

 カープがまだベイスターズの友だった頃、'08年に書かれた文字に胸が熱くなる。この人に知らせたい。もうすぐびっくりするくらい強くなって、3連覇するんだよって(たぶん知ってる)。

【次ページ】 カープは娯楽を超えて生活に。

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