福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史が語るサッカーの“音と声”。
的確に声掛けしてくれた選手は誰?
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/11 09:00
現役時代、試合中に中山雅史とコミュニケーションを図る福西崇史。リモートマッチの解説を担当して、改めてサッカーの醍醐味を味わった。
セットプレーで飛び交う声。
<さまざまな音がピッチに巻き起こる中で、重要となるのはチーム同士での「声掛け」だ。それを象徴するのはセットプレー時だと言う。>
川崎と鹿島の試合で感じましたが、セットプレー時の声掛けは味方を集中させるために本当に必要なことだな、と。もしマークを外されてシュートを打たれてしまうと、失点に直結する。セットプレーはそれだけシビアな場面だからこそ、GKが選手それぞれの集中力を高めたり、マークを外されないようにする指示を出しているんです。
直接FKの壁を作るときもその1つ。川崎のチョン・ソンリョンが「タツヤ(壁に入った長谷川竜也)、もう少し右!」といった声を出していました。こういった指示の声で、シュートを狙う相手キッカーのコースを狭めようと微調整しているんです。
観客が入っている時の試合でも、GKがスパイクの裏でゴールポストを「カンカンカン!」と蹴る音がたまに聞こえることがあります。それだけ大歓声の中では声が通りにくくなり、壁に入る側としても、あれくらいの距離でも本当にGKの指示が聞こえなくなるんです。だからGKがポストを“蹴る”ことで自分の声に集中させているんですよ。
試合全体を見ても、声が通る分だけ守備の修正が早く、しっかりと守備ブロックができていた印象を受けました。これはリモートマッチだからこそ起きたこと、かもしれませんね。
ありがたいのは「後ろからの声」。
<声掛けにも様々な工夫がある中で、ボランチを務めていた経験から「どんな声掛けがあると、やりやすいのか?」と聞くと、こう貴重な体験談を話してくれた。>
ボランチとしてありがたいのは、やっぱり後ろからの声なんですよ。 例えば“自分から見て左側にボールがある中で、右から相手選手が来る”という状況。ここで自分の立ち位置を決める時、DFから「○○、来てるぞ!」といった声が聞こえると、瞬時にポジションを修正できる。
ヤット(遠藤保仁)のように立ち位置を上手く変えてプレーする選手が対戦相手にいると特に気を使わなければいけないから、こういった声掛けは本当に助かる。ジュビロ時代だとマコさん(田中誠)や(鈴木)秀人さんがそうですし、代表だとツネ(宮本恒靖・現ガンバ大阪監督)をはじめとした多くの選手がタイミングよく声を出してくれました。
立ち位置によっては自分の1列前にいるFWの動かし方も変わってくる。「フク、下がれ!」とDFに言われたら、自分に呼応してFWの選手にも下がってもらうように声をかける。そうやって組織的に守備をしているんですよ。能力の高い選手は基本的に次の展開を予測できていて、指示のタイミングが絶妙だなと感じることが多いですよね。