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上半期GI戦線総括。最大の衝撃は
コントレイルかアーモンドアイか。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byRepresentative
posted2020/07/03 19:00
ヴィクトリアマイルの勝利でGI勝利数を歴代最多に並ぶ「7」まで伸ばしたアーモンドアイ。秋GIで前人未踏の8勝目を目指す(代表撮影)。
古馬の根幹路線は牝馬が中心に。
一方、古馬の根幹路線では牝馬が中心になった感がある。
3200メートルの天皇賞・春(GI)こそ牡馬のフィエールマン(牡5歳、美浦・手塚貴久厩舎)が制したものの、2000メートルと2200メートルの大阪杯(GI)と宝塚記念(GI)はラッキーライラック(牝5歳、栗東・松永幹夫厩舎)とクロノジェネシス(牝4歳、栗東・斉藤崇史厩舎)の牝馬勢が優勝。とくに大阪杯は並み居る牡馬勢を押しのけてその2頭でワンツーフィニッシュを決めてみせた。
しかし、牝馬が強かったのはこの路線ばかりではなかった。
短距離1200メートル戦の高松宮記念(GI)は1位入線のクリノガウディー(牡4歳、栗東・藤沢則雄厩舎)が4着に降着となってしまった事もあったが、結果、モズスーパーフレア(牝5歳、栗東・音無秀孝厩舎)とグランアレグリア(牝4歳、美浦・藤沢和雄厩舎)の牝馬2頭が1、2着となった。
そしてグランアレグリアは続く安田記念(GI、芝1600メートル)で優勝。こちらは2着アーモンドアイ(牝5歳、美浦・国枝栄厩舎)とまたも牝馬の上位独占となった。
ヴィクトリアマイルの直線での衝撃。
さて、このようにアーモンドアイをしても終わってみれば脇役となってしまったわけだが、この春、最大のインパクトのあったレースはどれかと問われれば、私は彼女が勝ったヴィクトリアマイル(GI)を挙げたい。
これはあくまでも個人的な見解であり、人それぞれ違うだろうが、当方にはあの直線のパフォーマンスは稀に見る衝撃だった。
マイル以下の序盤から速い流れの競馬になると往々にして後ろからになりがちなアーモンドアイだが、このヴィクトリアマイルでは好発を決めると先行してみせた。そのまま掛かる事もなく流れに乗ると、直線を向いた時にはすでに明らかに他馬と手応えが違った。
手綱を取ったクリストフ・ルメール騎手に後にこの時の話を聞くと、笑みを隠せないといった表情で次のように語った。
「自分はまだ持ったままだったのに他の馬のジョッキー達の手は既に激しく動いていました。『やっぱりアーモンドアイは凄いな……』って思いながら乗っていました」