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渋野日向子、モグモグも笑顔も控えめ。
開幕戦はずっと“ゴルフしている”感じ。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byGetty Images/JLPGA提供
posted2020/06/29 20:30
女子ツアー開幕戦、まさかの予選落ちとなった渋野日向子。スイング改造に着手も、完成はまだ先のようだ。
考えることが増えた渋野。
考えること。
ピアニストの場合、優れたピアニストほど指先を素早く動かすときに必要な神経細胞の数は少なくて済む。それだけ動きや回路が洗練され、無意識に近い状態でコントロールできるのだという。ゴルファーの場合も同じだろう。思考のステップをできるだけ減らせればスムーズに体は動き、ラウンド全体にも流れを呼び込める。
この大会での渋野は違った。全英優勝で大ブレークした2019年を終えて、自他ともに認める課題だったアプローチ技術の向上をオフの大きなテーマに据えた。練習は9割方アプローチに費やし、58度のウェッジ一択だったアプローチの種類は、今大会では52度やピッチングウェッジを使ったものまで幅が広がった(完成度は別として)。
さらに4月に緊急事態宣言が発令された後、シーズン開幕が見通せない状況となると、青木翔コーチの指導の下でスイング改造にも着手した。スタンスを狭めたショットの構えは一目で昨季までと違うものだと分かる。パッティングのスタンスも狭まり、クラブのシャフトやパターも変わった。
選択肢が増えたはずのアプローチ。
短期間のうちにこれだけ変われば、考えることも膨大になる。ミスが出れば、そこでまた行き詰まる。初日は一時中断になるほどの大雨、2日目は強風という厳しいコンディションも余裕を失わせ、選択肢が増えたはずのアプローチもむしろマイナスに働いていた。
「いろんなアプローチに挑戦したいと思っていたので52度やピッチングで打ったりしたけど、練習をたくさんしていても試合でできなければ意味がないよなと痛感しました。本当に死ぬほど練習しないといけないんだなと思いました」
1+1が2ではなく、0.5や-1にもなるのがゴルフ。2日目の18番ではグリーン奥から高く上げて止めるロブショットをもくろんだものの、あえなく失敗に終わった。この場面だけでなく、何度もアプローチのミスがボギーを呼び込んだ。
「ロブショットも個人的にはかなり練習してきたと思っていたので、キャディーさんにも大会前から『見ていてください』と言っていたんです。もっとマシなアプローチができると思っていたんですけど」