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クラブ最強は読売かヴェルディか?
与那城の衝撃と幻のアモローゾ。
text by
加部究Kiwamu Kabe
photograph byAFLO
posted2020/06/10 18:00
1人の選手がクラブのカラーを決めてしまうことがある。与那城ジョージはヴェルディにとってそういう選手だった。
J元年、ヴェルディのサテライトには……。
一方でJ元年のヴェルディも、さらに大きな潜在的爆発力を秘めていた。後年当時監督だった松木は、テレビの仕事でブラジルを訪れかつての保有選手にインタビューをした。
「おまえを使わなくても勝てて幸せだったよ」
使っていればもっと楽に勝てたかな、という想いを込めての言葉だったという。
すると初代サテライトリーグ得点王のアモローゾも、きついジョークで切り返して来た。
「もうオレは高くて買えないよ」
Jリーグ初代王者に輝くヴェルディだが、実はサテライトリーグで戦うセカンドチームにも多くの金の卵を抱えていた。19歳のアモローゾを筆頭に、石塚啓次、山口貴之ら個性豊かな選手たちの連動は、しばしば紅白戦でトップチームを脅かしたという。
アモローゾはトップでも通用した?
与那城の時代からチーム内に至芸があれば真似て盗むのがクラブの伝統だが、この頃の若手の視線は、アモローゾのプレーに釘付けだったそうだ。北澤の証言である。
「なかなか足の長さの問題もあるので難しいけれど、あのテンポやリズムの変化などをみんなが自分のものにしようとしていました」
柔軟なテクニックに加えて、常識的には頭で競るボールを平然と足で処理してしまう驚異的なジャンプ力も備え、あるサテライトの仲間は「どうしてトップが使わないのか不思議で仕方がなかった」と回顧している。
確かに優勝候補筆頭でJ元年の優勝を宿命づけられたヴェルディが、3人の助っ人枠の中で19歳の抜擢に踏み切るのは難しい決断だったのかもしれない。出足で躓きファーストステージを落としたし、欧州でもターンオーバーの発想が生まれてくるのは数年先のことだった。
「滅茶苦茶センスがあり上手かった。でもまだ凄く細くて身体が大人になり切っていない印象でした。いきなり日本のサッカーに馴染めるかというと、どうなのかな、という感じはありました。カズさんだって1年目は、あまり点を取れていませんからね」(武田)