スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
マイナーリーグと生き残り対策。
米国「草の根野球」を守って欲しい。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/06/06 09:00
オハイオ州のデイトン・ドラゴンズ(レッズ傘下、1A)の本拠地・フィフス・サード・フィールド。現在、集客力がある球団も苦境に立たされている
マイナーリーグは無観客では成り立たない。
TVの放映権収入が年間17億ドルにも達する大リーグとは異なり、マイナーリーグは収入の大半を、有料入場者に頼っている。
球場入場料、ビール代、ホットドッグ代といった小銭の合算。あとは、地元企業からの協賛金。外野のフェンスやバブルヘッド人形に、スポンサーの名前がときどき書かれている。
換言すると、マイナーリーグの野球は無観客では成り立たない。
つまり、新型コロナウイルスが無力化されないかぎり、シーズンを開催することは不可能だ。治療薬やワクチンが認可されれば、「3密」を避けての開催も視野に入ってくるが、少なくとも今季はむずかしいだろう。
「アメリカの善」と言えるような空気。
マイナーリーグには、このところ逆風が吹きつづけている。
2019年の冬には、MLB機構が、大リーグ傘下にある42球団との提携を解消するという予定を公表した。160を超える球団総数を120前後に縮小し、人件費、開催や移動にかかる経費を削減しようとするのが狙いだが、世論の反発も大きかった。
マイナーリーグの野球は、アメリカのスモールタウンに根付いている。
一度でも体験してみればわかるが、人口数千から数万程度の町にある小さな球場には、穏やかで親密な空気が満ちている。
シーズンチケットの購入者が肩を寄せ合って談笑し、われわれのような観光客がふらりと訪れても、温かく迎えてくれる。その空気を「アメリカの善」と呼ぶのは短絡的かもしれないが、少なくとも私は、マイナーリーグの球場で嫌な思いをしたことがない。