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島袋洋奨、母校・興南で新たな人生。
自分の経験を子供たちのヒントに。
 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/06/05 19:00

島袋洋奨、母校・興南で新たな人生。自分の経験を子供たちのヒントに。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

この春、母校・興南高校に“復帰”した島袋洋奨。将来は教員になることを視野に入れながら、自らの経験を次世代へ繋いでいく。

選抜後も変わらない挑戦者の精神。

 凱旋時の熱狂ぶりはすさまじいものだった。優勝の原動力となった島袋だが、喜びに浸る時間は長く続かなかったという。

「沖縄に戻ると、空港に1500人以上の方が迎えてくれてビックリして。大会前は自分たちがここまでやれるとは思ってなかったし、沖縄に優勝旗を、というようなことも恐れ多くてみじんも考えていなかったんです。そういう無欲さが良い方向に向かった上での結果でした。ただ、沖縄を勝ち抜くだけでも大変なので夏はこうはいかないだろうな、と次のことも考えていました。我喜屋(優)監督からも気の緩みを指摘され、意識的に切り替えは早くしました」

 マイペース、と自身を表現する島袋は、雑音に惑わされることなく淡々と夏へむけた調整をはじめていた。日増しに「春夏連覇」を期待する声が大きくなるが、そういった期待がプレッシャーになることもなかったという。島袋の話を聞くと、当時の興南は春を制覇した後も、意識的に挑戦者としての精神を持ち続けていたことを理解できる。

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 全国の強豪校に対しても怖気づくことなく、むしろそういった名門に挑むことをモチベーションとした。この年の興南の勝負所での逆転劇は、挑戦者であることを選んだゆえの産物だったのかもしれない。

 格上の強豪はもっと練習をしている――。

 夏に向けての練習は緩むどころか、一層厳しさを増した。沖縄予選を危なげなく制し、甲子園への出場を決めている。

初めて負けを意識した報徳学園戦。

 島袋にとっての4度目の聖地でも、興南旋風は続く。春と同じく打線の援護を受け、島袋の投球も冴え渡った。
 
「アドレナリンが全開に出ていて、連投でも疲れを感じなかった。甲子園は、時に実力以上のパフォーマンスを出せる場所でもある。あの夏の自分がまさにそうでしたね」

 1回戦で鳴門高校に勝利し勢いづくと、明徳義塾、仙台育英、聖光学院といった名門をことごとく打ち破っていく。そして、最も印象的だったという準決勝の報徳学園戦へと駒を進めた。試合は2回までに報徳打線から集中打を浴び、5点を先行される苦しい展開となる。連投の疲れもあってか、島袋も制球に苦しんだ。

「甲子園に来ても、負けたら終わりという感覚がなかったんです。ただ、報徳戦で序盤に打たれ、『これは負けるかも』と初めて負けを意識した。あそこまでボコボコにされたのも始めての経験でしたから」

【次ページ】 興南の開き直りが生んだ逆転劇。

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