熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER

カズのブラジル初ゴールを目撃した
唯一の日本人記者、色褪せぬ記憶。 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

PROFILE

photograph byHiroaki Sawada

posted2020/06/03 11:50

カズのブラジル初ゴールを目撃した唯一の日本人記者、色褪せぬ記憶。<Number Web> photograph by Hiroaki Sawada

1988年3月19日のプロ初ゴールを伝えるパウリスタ新聞。記事と写真は筆者が手掛けたものだ。

コリンチャンス戦に溢れる熱気。

 午後3時少し前、ジャウーに着いた。人口約10万人で、整った街並みだった。

 試合は午後4時から。スタジアムへ向かう道は、ファンで溢れていた。納谷さんは、スタジアムのすぐ手前の駐車場に車を置いた。

 スタジアムの収容人員は、1万3000人。強豪コリンチャンスが相手ということで、試合開始1時間前というのにほぼ満員。人々の熱気が立ち込めていた。

 僕は写真を撮らなければならないので、ピッチレベルに入った。納谷さんは、スタンド最上部のVIP席へ上がっていった。

 試合がテレビで生中継されるので、テレビのクルーがピッチに入っていた。ラジオのインタビュアーが数人、マイクを持って動き回っていた。

 試合開始15分前、緑のユニフォームのキンゼの選手たちが勢いよくピッチに入ってきた。背番号11を付けたカズの姿もある。観衆が一斉に立ち上がる。爆竹がけたたましい音をたてて鳴り続けた。

 続いて、コリンチャンスの選手も入場。スタンドから激しいブーイングが起こる。

 僕は、キンゼが攻める側の左タッチライン沿いに陣取った。カズの写真を撮るためだ。

ドリブルで格上マーカーを幻惑。

 キンゼのキックオフで試合が始まった。大歓声が沸き上がる。

 両チームとも、フォーメーションは4-3-3。左ウイングのカズをマークするのは、右SBのエジソン。2年前の1986年W杯メキシコ大会にブラジル代表の一員として出場しており、選手としての格はカズよりずっと上だ。

 しかし、カズはそんなことは全く気にしていないようだった。パスをもらうと、果敢に1対1の勝負を挑む。得意の跨ぎフェイントでエジソンを幻惑し、縦へ抜け出して鋭いクロスを入れる。

 何度目かの対決で、エジソンがバランスを崩して尻餅をついた。スタンドがどっと沸き、「カーズゥ、カーズゥ」というコールが起きた。

【次ページ】 そして訪れた歓喜の初ゴール。

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
キンゼ・デ・ジャウー
三浦知良

海外サッカーの前後の記事

ページトップ