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カズのブラジル初ゴールを目撃した
唯一の日本人記者、色褪せぬ記憶。 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byHiroaki Sawada

posted2020/06/03 11:50

カズのブラジル初ゴールを目撃した唯一の日本人記者、色褪せぬ記憶。<Number Web> photograph by Hiroaki Sawada

1988年3月19日のプロ初ゴールを伝えるパウリスタ新聞。記事と写真は筆者が手掛けたものだ。

そして訪れた歓喜の初ゴール。

 前半終了間際だった。キンゼの右ウイングが右サイドを突破し、ライナー性のクロスを入れる。ボールは、コリンチャンスのディフェンダーの頭上を越えてゴール前へ。

 そこへカズが走り込んでいた。

 高々と飛び上がり、強く頭で叩く。これがGKの左手をかすめてゴールネットを揺すった。

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 一瞬、カズは「信じられない」というような表情を浮かべた。ゴールが間違いないとわかると、右手を高々と掲げてガッツポーズ。そこへ、キンゼの選手たちが次々に抱きついた。

 GKが全く動けない。見事なゴール。カズの、そしてブラジルにおける日本人選手の初ゴールだった。

 スタンドのファンは、総立ちになって大騒ぎ。再びカズ・コールが起きた。

 このとき、僕もカズの動きに合わせてゴール裏へ動いていた。しかし素人カメラマンの悲しさで、ゴールの瞬間、シャッターを切り損ねた。やむなく、チームメートに祝福されるカズの姿に向かって懸命にシャッターを切った(この写真は何とか撮れており、拙い記事と共に火曜日の社会面トップに掲載された)。

カズの縦パスから追加点が!

 キンゼの1点リードで、前半が終わった。

「いやあ、えらいことになった」と思いながらスタンドを見上げると、観衆は抱き合ったり、何やら叫んで大喜びしていた。

 後半が始まった。

 コリンチャンスも、このまま負けるわけにはいかない。激しいプレスをかけてキンゼの選手からボールを奪い取ると、サイドバックを押し上げて猛攻を仕掛ける。これをキンゼの守備陣が辛うじて跳ね返す、という展開が続いた。

 後半20分、カズが中盤でパスを受けると、右足のアウトサイドで縦パスを放つ。これを受けたFWが胸でトラップして前へ運び、マーカーをかわして右足でシュート。コースはGK正面だったが、タイミングが合わず、股の間を抜けていった。

 またしても爆竹が鳴り、大騒ぎになる。

 その直後、コリンチャンスが右からのクロスを頭で決めて1点を返した。それでもキンゼはスルーパスをFWが決めて3点目を挙げる。勝利を確信した観衆が飛び上がり、抱き合って喜ぶ。

 試合終了直前、コリンチャンスは左サイドからのFKを頭で決めて追いすがる。その後も懸命に攻めたが、キンゼの選手たちが体を張って守り切った。

 3-2。キンゼがコリンチャンスを倒したのである。

【次ページ】 鳴り止まぬ爆竹の中でインタビュー。

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