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日々の練習どころか乱闘まで禁止?
MLB7月開幕案に深まる選手との溝。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2020/05/24 08:00
レイズの2018年サイ・ヤング賞左腕スネルは「マウンドに立つとしたら、約束された額を支払ってもらいたい」と給与半減案に反対を表明。
プレーしない人の「上から目線」。
これらの条件は、ウイルス対策としては最低限のレベルなのかもしれない。
だが、これらすべての規制を守りながら、選手たちがこれまでと同じようなパフォーマンスを披露できるか、と問われれば、ほぼ全員が「NO」と言うに違いない。
18.44メートルの距離がある投手と打者はともかく、近距離の打者と捕手だけでなく、野球には常に間一髪のタッチプレーが伴う。万が一、濃厚接触を避けるようなプレーがあるとすれば、野球の醍醐味(だいごみ)だけでなく、試合の勝敗にも影響しかねない。
機構、オーナー側とすれば、野球再開へ向けて最善策を探った結果なのかもしれない。だが文面から判断すると、グラウンドでプレーしたことのない人の提案、もしくはプレーする選手の気持ちとは、大きくかけ離れた「上から目線」と言われても仕方ない。さらに、無観客で実施する場合のさらなる年俸削減を提示されたことによって、選手側の反発も顕著になった。
サイ・ヤング賞、MVP選手の反論。
2018年サイ・ヤング賞のブレーク・スネル(レイズ)をはじめ、'15年MVPのブライス・ハーパー(フィリーズ)らが、経営重視の機構、オーナー陣からの提案に対し、SNSなどを通して反論したことで、今後の先行きはさらに不透明となってきた。
生命のリスクを抱えたまま、減額される年俸、制限のある環境での中プレーすることを、おそらく全メジャーリーガーは願っていない。
機構側が目指す7月4日前後での開幕は、あくまでもベストシナリオだが、だれもが求めているのは、より多くのファンが楽しめる、より安全な環境。
ただ、依然として、両者の間に大きな溝、感覚の差があることも否定できない。
経営優先のオーナー陣と、家族を含めた安全、健康を重視する選手側との温度差が、あらためて浮き彫りになったのは、おそらく偶然ではない。