フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生結弦や宇野昌磨の戦略も変わる?
ISUのルール改正による影響を探る。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2020/05/14 11:50
ルール改正で、4回転のルッツ、フリップ、ループが同じ基礎点となった。羽生結弦らトップスケーターはこれをどう見るか。
時計の針で考えてみると……。
わかりやすく説明するため、仮に時計の針を1本のみとして氷の上のブレードに見立ててみよう。大多数の逆時計回りの回転の選手なら、12時の数字の位置で踏み切って、3時の位置で着氷すれば回り切ったとみなされていた。
だが平昌オリンピックが終了した2018/2019年シーズンから、3時ジャストの着氷は、回転不足のほうに含まれるようにルールが変わった。1目盛りでも2時のほうに超えていないと、回転不足ということになったのだ。
来季からは、4分の1ジャストの位置で着氷したジャンプには、技術判定パネルがジャンプに4Tq(4トウループq)などとつけて、ジャッジたちに回転がギリギリセーフであったことをモニターの表示を通して伝える。
ジャンプの基礎点は変わらないが、各ジャッジはGOE(グレードオブエクスキューション)でそれに(この場合はおそらくマイナスの)評価を加える、というように改定された。
ISUは正しい方向に進んでいるのか。
だが実際のところ、技術スペシャリスト、アシスタント技術スペシャリスト、技術コントローラーの3人からなる技術判定パネルは、現在のリプレイシステムで、すごいスピードで踏み切り、空中で回転してカーブを描きながら降りてくる選手のブレードの着氷位置を、まるで紙に描かれた精密画を分析するように4分の1の位置、と正確に判定できるものなのだろうか。
先にも述べたように、3種類の4回転ジャンプが同じ点になったという比較的大きな改定の理由、その経緯なども説明のないまま、毎回各コーチと選手たちはISUのルール改定に振り回されていくことになる。
今後もまだこれから、細かい改定は続いていくだろう。
「現在はプログラムの振付をするために、PCを片手に、もう片手には計算機が必要」と嘆くコーチや振付師たちの声は、切実だ。
こうして毎シーズンのように改定を実行し続けているISUは、果たしてこのスポーツを正しい方向に導いているのだろうか。
疑問を感じることは多々あるが、今後どのようになっていくのか見守っていきたい。