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羽生結弦や宇野昌磨の戦略も変わる?
ISUのルール改正による影響を探る。
posted2020/05/14 11:50
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
5月11日、国際スケート連盟(ISU)は、2020/2021年シーズンのシングルとペアにおける技術要素の基礎点の改定を発表した。
現在、新コロナウイルスの影響で世界中のスケーターたちは、通常のトレーニングもままならない状態だ。来シーズンのスタートもどのようになるのか、まだ予想できない状態ではあるが、今回のルール改定の概要と、その影響について少し考えてみたい。
もっとも大きな変更は、4回転のルッツ、フリップ、ループの基礎点がすべて11.00になったことだろう。
昨シーズンまでは4ルッツが11.50、4フリップが11.00、4ループが10.50で、ルッツとループの点差は丸々1ポイントあった。
周知の通り、これまでISUが設定してきたジャンプの難易度は、難しい順にアクセル、ルッツ、フリップ、ループ。そしてサルコウ、トウループと続く。
だが今回の改定によって、4回転においてはルッツ、フリップ、ループの3つのジャンプは同格にされたことになる。
この改定がどのような理由と根拠によるものなのかは、発表されていない。だが時には0.01ポイントが勝負を分けることもあるこのスポーツにおいて、かなり思い切った改定だといえるだろう。
各選手が得意なジャンプを選ぶようになる
この3種類の4回転の中で、羽生結弦はルッツとループ、宇野昌磨はフリップ、ネイサン・チェンはルッツとフリップをフリーに組み込んでいる。
4ループは2016年秋に羽生結弦が世界で初めて試合で成功させたジャンプだ。その後宇野、チェンも試合で成功させたことがあるが、2人とも先シーズンはプログラムに組み込んでおらず、トップスケーターで現在このジャンプを武器にしているのは羽生のみだ。
その彼にとって、4ループが4ルッツ、4フリップとポイント的に同じ価値になったことで、精神的に楽になった部分はあるだろう。体調によって4ルッツをやめても、事実上難易度を落とした、ということにはならなくなるからだ。