バレーボールPRESSBACK NUMBER
総体中止は高校バレーにも衝撃。
コロナ収束後の未来を描く必要性。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2020/05/15 07:00
今年1月の春高を制した東山も緊急事態宣言発令以降は練習もままならない状態が続いた。
入部希望者が増え、選手たちも成長。
昨夏のインターハイに6年ぶりに出場した鳥取県の米子工高男子バレーボール部の桑名伸一郎監督は、まさに“インターハイ効果”を実感した1人だ。
「予選で46-44の大熱戦を制したことを報じていただいたこともあり、今年の入部希望者は14名。これは僕が就任してからの8年で最多人数です」
選手たちにとって初めてのインターハイを「戦う準備をさせてあげられなかった」と振り返るように、予選敗退と苦い結果に終わったが、得られたものは大きい。桑名監督はそう言う。
「大会前に強豪校と合宿をさせていただいたのですが、それも全敗。選手は心が折れているだろうな、と思っていたんです。でも後で聞いたら『大会前に全国の強豪校と戦えたおかげで、試合中に相手のブロックがよく見えた』と。全国大会に出て、強豪校と接することは指導者にとっても学ぶことばかりですが、選手も同じ。まさに、世界が広がる、というのはこういうことなんだ、と初めて実感できたのが昨夏のインターハイでした」
夏はインターハイ、秋は国体、冬は春高。試合の多さや過密日程も問題ではあるが、その実戦経験を通して技術面や精神面の成長につながるのも確かだ。指導者からすれば、年間プランを描くうえでの貴重な機会が絶たれたうえに、練習すらできないのが現状。インターハイが開催されていれば、と嘆きたくもなるが、いつまでも嘆くばかりでは何も変わらず、前に進むことはできない。
「同じ目標に向かうエネルギーを」
いつになるかわからないとはいえ、必ず巡ってくるであろう、「次」の機会を見据えて何をすべきか。新たなチャレンジも始まっている。
たとえば、鹿児島県の川内商工高男子バレーボール部。新型コロナウイルスの感染者数が少ない鹿児島県は、11日から分散登校も開始。部活動はまだ再開できずにいるが、Zoomを使い、9時と16時の2回、全員でトレーニングを行うことを日課としている。トレーニング時間もパソコン越しに選手の顔が見られることで、健康チェックやコミュニケーションも兼ねている、と言うのは練習の指導にあたる川畑俊輔コーチだ。
「非常事態宣言が出る前、3月に休校を余儀なくされた時は何も準備できず、選手に『それぞれできることをやるように』と言うだけでした。その結果、4月に学校が一時再開した時に3週間で平均して体重が5㎏も増えていたんです。これはダメだ、と。学校に来ない、練習もできない非日常だからこそ、いかに日常へ近づけてやるべきことができるか。
今の高校生は機械に強いので、きっかけとして最初の形を与えれば、そこからどんどん応用していく。まずは一緒にトレーニングをして、課題をクリアする。同じ目標に向かうエネルギーを提供することが、大人の仕事だと思いました」
1日2度のトレーニングに加え、各自にYouTubeでバレーボールの試合を見て分析させることや、休校前に行った紅白戦の映像を選手と共有し、それぞれ課題を見つけて克服するための策を考えさせるなど、あえて義務化している。