バレーボールPRESSBACK NUMBER
総体中止は高校バレーにも衝撃。
コロナ収束後の未来を描く必要性。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2020/05/15 07:00
今年1月の春高を制した東山も緊急事態宣言発令以降は練習もままならない状態が続いた。
あえて放任する駿台学園・梅川監督。
何をすればいいかわからないからこそ、ひとつの方向性を示す川内商工のような取り組み方がある一方で、真逆とも言うべき方法を選択したのが今年の春高で準優勝した東京の駿台学園高だ。最も感染者数が多い東京都は、3月2日から学校も完全休校。自宅でトレーニングができるように、と各自にプレートを1枚ずつ持ち帰らせたが、メニューを与えることはせず、日々の報告も一切なし。
ある意味、野放しでサボろうと思えばいくらでもサボることもできるのではないか、と危惧するも、「それでも問題はない」と梅川大介監督は言う。
「休校になる前、部活が再開出来る時の目安になるようそれぞれの体組成値も計測しました。サボればそれだけ体重や体脂肪、筋肉量に表れるし、何より、困るのは自分。試合がない分、じっくり身体づくりができますし、休校期間中もトレーニングや、映像を見てバレーボールを学ぶこともできる。そこで、やる、やらない、が再開した時にどんな形で出てくるか。むしろ僕はそれが楽しみだし、この時間は選手にとってもチームとしても、土台がつくれるチャンスだと思っています」
開成高にとっては、この夏が最後。
未曾有の事態も、嘆くばかりではなく前へ。「割り切れない」と葛藤しながらも、新たな目標を抱く。その根底には「春高」という明確なターゲットがあるからに他ならない。実際に前述の4校はすべて、インターハイが絶たれたとはいえ、3年生が次に目指す目標は春高出場や春高優勝。あくまで、インターハイの、その先だ。
だが、高校生バレーボール選手は彼ら、彼女たちのような境遇ばかりではない。いや、むしろそのほうがずっと多い。
大半は受験勉強や就職活動に向けて、3年生は春高まで部に残らず、本来開催されるべきだった各都道府県の総体や関東、関西、九州などのブロック大会が最後の公式戦になるはずだった。
事実、東京都では30~40校が関東大会の予選を最後に3年生が引退する。その1つが、全国屈指の進学校である開成高だ。
超難関を受験で突破して入学してくる生徒のほとんどがバレーボール初心者。中学から高校までの6年間、または高校からの3年間、OBの指導を受けながら、週3回の練習や週末の練習試合を重ね、2015年には関東大会の都予選でベスト16進出も果たした。
お世辞にも全国大会が目標、とは言えない。だが対戦相手の傾向を分析し、戦術は選手たちが考え実践する。その成果が発揮できずに敗れた試合の後は、本気で悔しがった。