Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

〈素朴な疑問〉プロ野球の「珍プレー」っていつから? みのもんたが振り返る、伝説の“宇野のヘディング事件”とは 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2021/04/12 17:01

〈素朴な疑問〉プロ野球の「珍プレー」っていつから? みのもんたが振り返る、伝説の“宇野のヘディング事件”とは<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

伝説となった1981年の「宇野ヘディング事件」

「懐かしいねぇ~。銀座でもよく『お願いみのさん、私にもやって~』と頼まれてね。オールド一本で即興をやりましたよ。ナレーションの収録は基本一発録りです。長編モノだけは事前に尺を確認したけど、それ以外は『よーい、スタート』で目の前にある映像にアドリブであてていく。珍プレーは反射神経が勝負ですからね。プレーのスピードが物凄く速いから、ポンポンとテンポよく言葉が出ないとダメ。事前にVTRを見て『これを言おう』と構成を考えちゃうとうまくいかないんだ。余計なしゃべりは極限までカットして思い切り気持ちをぶつけるんです。ホントに痛そうなら『痛い!』って言っちゃうし、乱闘になるとマイクの前で必死の形相になったりね。だからナレーションの収録前に編集は全部終わらせたし、声を入れた後も絶対にいじらせません。僕の場合はプレーではなく人物の気持ちを代弁していましたから尚更ね」

 みの氏は珍プレーのナレーションを『アナウンサー人生の代表作』と振り返る。即興で人物の心情を察して言葉に変換する芸当は、野球を専門としていないからこそ生まれた“誰もが共感できる笑い”である。それは、先日亡くなった志村けんやドリフのコントに通ずる世界観を持つ。

「選手がマジメにやっているから余計に面白い」

「珍プレーがなんで面白いのかっていうと、やっぱり選手がマジメに一生懸命やっているから余計に面白いんだよね。あれは狙ってできるものじゃありませんよ。瞬間瞬間にその選手の気合と、素質と、やる気、そんなものが体ごとぶつかって生まれる。そういう姿が人間として共感できるから面白いんですよ。だから僕もその瞬間の言葉をぶつけてきました。当時は自在に反応ができていましたからね。今も『ナゼやらないんですか?』という声を頂きますが、僕は『できないからです』と正直に答えています。もう反射神経が鈍っちゃいましたからね。ただ、珍プレーは僕だけのものじゃない。いろんな人のいろんな形があっていいんです。主役はあくまでも選手のプレー。楽しみ方はひとつじゃありませんからね」

 今年も新しい珍プレーで大笑いができる日が来ることを祈りつつ、今は往年の珍プレーでも見ながら開幕を待ちたいと思う。

みのもんたMonta Mino

1944年8月22日、東京都生まれ。立教大学卒業後、'67年に文化放送入社。'79年退社後はフリーとなり『プロ野球ニュース』週末版を担当。『おもいッきりテレビ』『朝ズバッ!』など多くの番組の司会に。今春TVからの引退を表明した。

関連記事

BACK 1 2 3
#みのもんた
#宇野勝
#星野仙一

プロ野球の前後の記事

ページトップ