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Vリーグ界きってのスーパーサブ。
遅咲き鈴木悠二の武器と新たな挑戦。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byTORAY ARROWS

posted2020/04/24 11:00

Vリーグ界きってのスーパーサブ。遅咲き鈴木悠二の武器と新たな挑戦。<Number Web> photograph by TORAY ARROWS

Vリーグ「スーパーサブ部門」の1位に選出された鈴木悠二(18番)。最大の武器は磨き続けたジャンプサーブだ。

ダメな自分を、自分でわかっている。

 この2シーズンは再び控えに回り、リリーフサーバーとしての出場が増えたが、鈴木の姿勢は変わらない。

 バレーボールのプレーの中でサーブは唯一、選手が1人でできるプレーだ。ただその分、コンディションの変化や、微妙な心の揺れが表れやすい。リリーフサーバーとしてコートに入るのは、主にセット終盤の緊迫した場面。しかし鈴木は緊張やプレッシャーをほとんど感じないと言う。

「練習しないで出たらやっぱり緊張しますけど、練習した状態で出るのは、あまり緊張しません。練習をしっかりやったって自分で思えたら、大丈夫です。練習をやらない下手くそはダメだけど、(練習を)やっても下手くそだったらしょうがない、と思って」

 潔いほどの割り切り。篠田監督は、「あいつは外からの影響をまったく受けない。だからメンタルが超強いんです」と言う。

 心のブレが少ない理由を聞くと、鈴木はこう答えた。

「ダメな自分を、自分でわかってるので。普段一緒に練習しているみんなもわかってくれていると思います。僕、結構変なポカをやるんですよ。試合でも『オイオイ』っていうようなミスをすることがあるけど、『ま、悠二さんだからしょうがないか』、『すまんすまん』みたいな(苦笑)。周りがいい環境を作ってくれているし、しょうがないことはちゃんと自分で受け入れられている。それができないと、自分の中で『あー!』と変になってしまうと思うんですけど、ダメな自分を受け止められているから。

 昔は、『俺はレギュラーでやるんだ!』って感じでやっていましたし、かっこよく見せたいとか、大きく見せたいとか、いいプレーをしよう!みたいなのがありましたけど、たぶんそういうのがなくなったから、やっと試合に出られるようになったんじゃないかなと思います。その分、アドレナリンが出て『ウワー!』みたいな、エネルギッシュさは足りないのかなと思う。だからあまりいいことじゃないのかもしれないですけどね」

プロ11年目、33歳でポジション転向。

 昨季('19/20シーズン)、鈴木はミドルブロッカーに転向した。11年目、33歳でのポジションチェンジである。

 その前年は出場機会を減らしていた。昨季は伏見大和(ジェイテクトSTINGS)が退団してミドルブロッカーが手薄になったため、鈴木のサーブ力を活かすためにもと篠田監督が決断した。

 昨シーズンが始まる前、篠田監督が「ミドルやってくんねーか?」と打診すると、鈴木は「新しい挑戦ですね。大丈夫です」と答えたという。

「あいつ、すごいです。ここまでやってきた選手が……。『新しいことできるってすごいですね。楽しいですね』って言ったんですよ。『こいつ使いてー』と思いました」

 その時のことを、鈴木はこう振り返る。

「『僕でいいんですか?』とは思いましたけど。もう年齢的にも実力的にも、そろそろ終わりが近づいているというか、いずれはそういう(引退する)時がくるというのは自分でも考えることがあって、そういう段階でミドルをやってと言われたので、抵抗はそれほどなかったです。

 もうちょっと若かったら(抵抗が)あったと思いますけど。気持ち的に、もう終わってるってわけじゃないですけど、もう先が長くないし、チームが必要としていることなんだったら、やろうかなって」

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