濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
格闘技大会に防護服カメラマンが。
『ONE』、異色で究極の無観客試合。
posted2020/04/23 07:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takashi Iga
この3月、4月はさまざまな団体が無観客試合を行なってきたが、とうとう会場非公開の大会が出てきた。
4月17日の『Road to ONE 02』。アジア各国でビッグイベントを開催するONE Championshipのスピンオフ的イベントだ。もともと都内のイベントホールで開催予定だったが別のライブハウスに変更となり、日程も変わった。そうこうしているうちに緊急事態宣言だ。さらに会場が変わって、その場所は非公開とされた。会場への心ないクレームは回避しなければいけない。
「ABEMA(AbemaTV)」で生中継されたこの大会は、基本的に“取材不可”でもあった。媒体には試合後、オフィシャルの写真が提供されている。場内の人数をできるだけ減らすための措置だった。
格闘技会場の「ソーシャルディスタンス」
筆者はそんな大会を、運よく“現場取材”することができた。ABEMA関連の媒体で仕事をしているため、オフィシャルライター的な立場で入場を許可されたのだ。大会前、ABEMAスタッフから会場の住所を教えられ「移動は電車ではなくタクシーでお願いします。領収書を忘れずに」と念を押された。駅や電車内での不要な接触を避けてほしいという配慮だ。
それ以外にも、この大会の“感染対策”は徹底していた。中継スタッフは最小限。場内の消毒に加え、ケージサイドの運営スタッフとカメラマンは防護服着用である。選手控室には、別の建物の会議室が使われた。試合が終わったら選手は随時帰宅。普段のように会場に残って仲間の試合を見ることができない。おかげで場内のソーシャルディスタンスは上々だった。
とはいえ格闘技の試合である。選手同士はどうしても“濃厚接触”が避けられない。検温をはじめとする体調チェックを入念に実施しても、批判する者は批判するだろう。にもかかわらず、なぜ大会を開催したのか。いくつもの代替会場候補を下見し、感染対策に費用をかけてまで緊急事態宣言下で格闘技の試合を行なう必要はあったのか。もちろん主催者側は「ある」として開催に踏み切った。