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40年前のインタビューから探る、
山下泰裕JOC会長「残念だ」の裏側。
posted2020/04/21 11:40
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
新型コロナウィルス問題の事態の推移はめまぐるしく、少し前の情報もすぐに古く感じてしまう。
そういう意味では、この件はもはや旧聞に属するのかもしれない。が、胸の奥につかえていたのも確かだった。
今から約1カ月前、3月20日のことだ。
JOC(日本オリンピック委員会)の山口香理事が「東京五輪を延期すべき」と訴えたことに対し、山下泰裕JOC会長が「JOCの内部からそういう声が出たのは極めて残念だ」と発言したことが物議を醸した。
IOC(国際オリンピック委員会)も日本側も「予定通りの開催」に固執していた時期だった。
40年前の経験から生じる感情。
しかし、世界情勢は既に逼迫していた。
WHO(世界保健機関)がパンデミック宣言をしたのが3月11日。アメリカが国家非常事態宣言を出したのが同14日。
イタリア、スペインなどのロックダウンもあり、スポーツ大国のアスリートから「予定通りの開催」に異を唱える声が噴出するようになっていた。
それどころか世間からは「中止」という声も聞かれるようになっていた。
時宜に照らし合わせれば山口理事の意見は正当性がある。
一方で組織運営の観点からすると、トップとしては発言をいさめる以外にはない。
さらに、山下会長といえば、以前はマスコミ公開で行なわれていた理事会を非公開としたことで知られる。密室会議を推し進めたひずみが山口理事の訴えにつながったのだろう。
ただ、山下会長の「残念だ」という言葉には、40年前の経験から生じる感情がこもっているようにも受け取れた。