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名将リッピ、カンナバーロにピルロ。
イタリアW杯優勝の団結力を今こそ。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/04/17 11:50
デルピエーロやカンナバーロ、ピルロらを巧みに起用し、アズーリをW杯優勝に導いたリッピ。その采配術は偉大だった。
戦略の中心はピルロだった。
イタリアの戦略の中心となっていたのは、やはりピルロだ。守備から攻撃へと切り替わると貪欲にボールを受け、相手のプレスをかわす巧みなキープで時間を使い、正確なパスで攻撃を加速させる。
終盤にジダンの退場劇があったものの、ポゼッションはイタリアが55%とフランスを上回っていた。ゲームメイクでフランスの攻撃の流れを切り、時間を奪っていった証左だ。
試合は延長120分間を経て、1-1のままPK戦へ。
このとき、リッピ監督は良い手応えを得ていたという。
「選手たちは試合中のムードをPK戦に持ち込むものだ。良いときはみんな『オレが蹴ります!』って言ってくるが、そうでないときは、ちょっと消極的になる」
W杯決勝から数カ月後、カターニア大学での講演に呼ばれた彼は、このような裏話をしていた。
「例えば私がユーベを指導していた2003年のCL決勝は内容がいまひとつだった。だからなんとなくみんな嫌がって、『じゃあ仕方なく』って感じで受けた選手もいた。そして、実際負けた。一方、W杯決勝のときは違ったんだ。嬉しいことに『ミステル、俺蹴りますよ!』とみんなが言ってくれてね。ブッフォンまでもがだよ(笑)。彼には止めることを考えて欲しかったんだが」
グロッソ「俺でいいんですか?」
リッピはPKの上手い順にピルロ、マテラッツィ、デロッシ、デルピエーロを選択。そして、最後の1人は左サイドバックのレギュラー、ドイツ戦ではゴールも決めたファビオ・グロッソを選んだ。
「俺でいいんですか?」と躊躇する彼に指揮官は言った。
「いや、オーストラリア戦でも、ドイツ戦でも、お前さんは試合の最後に活躍してただろう。だから最後なんだよ」と言葉をかけて気持ちを乗せる。その結果、5人目のグロッソは見事に最後を締めて、イタリアに4回目のW杯優勝をもたらした。