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コロナ禍“日本人追い出し騒動”の
翻訳記事と、ドイツ在住記者の思い。
posted2020/04/15 11:40
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
ドイツ・ブンデスリーガのRBライプツィヒで、観戦に訪れていた日本人観客の団体がスタジアムから追い出されたとされる一件を覚えているだろうか。
3月1日、ライプツィヒ対レバークーゼン戦でのこと。
この日、スタジアムに詰め掛けた満員の観衆が試合に熱狂するなか、20人余りの日本人団体客が、セキュリティスタッフによって前半20分くらいで退席を要求されたという。
この件は、数人の日本人がツイッターでつぶやいたことで発覚した。新型コロナウイルス警戒のための措置だったという理由を受けて、SNS上では人種差別問題ではないかとの書き込みが殺到。一気にライプツィヒ批判ムードが膨れ上がっていった。
それだけに止まらず、日本メディアが刺激的なタイトルをつけたことで、さらなる波が生まれていく。そうした日本の状況を見て、今度はドイツメディアが記事にする。するとドイツのSNSが炎上する。さらに日本メディアがドイツ語を訳して記事を作成する。
情報が行ったり来たり。いつまでも事実がはっきりとしてこなかった。
関係者に当たって調べてみると。
どんな事情で事態が起こり、どこに問題があって、その後どのようになったのかという過程を調べもせず、公表を待つわけでもなく、「○○によれば」「△△紙が報じたところ」といった引用を繰り返す。
そうしたメディアからの情報をもとに、ユーザーは自分の先入観で物事を解釈していく。果たして、それで片付けていいのだろうか。
ライプツィヒの件に関して関係者を当たって調べた限り、クラブサイドが間違った指示を出していたわけではない。クラブと契約のあるセキュリティ会社のスタッフが、団体で日本人が観戦しているのを確認して新型コロナウイルスへの不安が大きくなり、そうした決断に至ってしまったようだ。