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名将リッピ、カンナバーロにピルロ。
イタリアW杯優勝の団結力を今こそ。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/04/17 11:50
デルピエーロやカンナバーロ、ピルロらを巧みに起用し、アズーリをW杯優勝に導いたリッピ。その采配術は偉大だった。
PK献上マテラッツィが同点弾。
大会直前、イタリア国内ではサッカー界全体を巻き込んだ一大スキャンダル、「カルチョーポリ」(審判買収・脅迫事件)が発覚。しかし、チームは一丸となり、試合毎にヒーローを生む戦いぶりで決勝まで駒を進めていった。
そして、7月9日、ベルリン・オリンピアシュタディオン。イタリアは、EURO2000の決勝で敗れた因縁の相手フランスと対戦する。結果はPK戦による優勝。それは、苦しみながらトーナメントを勝ち上がってきた縮図ともいうべき、交代選手も含めた14人がハードワークした末の粘りの勝利だった。
イタリアは最初につまずいた。7分、マルコ・マテラッツィがPKを献上し、これをジネディーヌ・ジダンのチップキックで沈められた。しかし意気消沈せず攻めに行き、12分後に得たCKのチャンスをきちんと活かして同点に追いついた。
キッカーは、プレースキックで世界的な評価を確立していたピルロ。この大会でも数々のゴールをお膳立てしていた彼は山なりのキックをファーサイドへ飛ばし、マテラッツィの頭に正確に当てる。PKにつながるファウルを犯していたマテラッツィは、自らの頭で帳消しにした。
大一番で伝統の“カテナチオ”発動。
試合はイーブン。フランスはジダンを軸にフローラン・マルダ、フランク・リベリー、ティエリ・アンリなどの個の力を前面に果敢に攻めてくる。
イタリアは、粘りの組織守備で抵抗する。どんなに攻撃的コンセプトでチームを作り上げていようが、いざとなればゴール前に引くことも厭わず、相手の攻撃を粘り強く弾き返して行く。
それがイタリア伝統の“カテナチオ”だ。
エリア内に進入されても、最後はカンナバーロが足を出してボールをかっさらい、そこを超えてもブッフォンがスーパーセーブ。この2人を中心に最終ラインはまとまり、フランスに多くシュートは打たれるが枠内シュートは抑える、巧みな守備を展開した。
イタリアは、ただ引いていただけではない。MFはもとよりFWもハードワークし、DFラインの前での攻撃の抑制を図った。61分には交代カードを2枚切るが、トッティとトーニに替えて投入したのはダニエレ・デロッシとビンチェンツォ・イアクインタだった。
若くしてアズーリに定着したローマの“未来のキャプテン”に中盤の汚れ役を任せ、走力のあるイアクインタでカウンターの迫力を出していく。単なるタレントではなく、チームワーク上の利益を考えたリッピらしい選択により、試合はますます拮抗した状態となる。