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いまアスリートは身を切るべきか。
欧米で広がる給与削減問題、日本は? 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2020/04/11 11:40

いまアスリートは身を切るべきか。欧米で広がる給与削減問題、日本は?<Number Web> photograph by AFLO

リオネル・メッシの7割返上表明で一気に火がついたアスリートの年俸カット問題。選手とクラブの哲学が問われている。

クロースやルーニーは一律の返納に反発。

 新型コロナウイルスの影響をもっとも受けている国のひとつ、スペインではバルセロナの選手たちが7割の減給を受け入れ、ほかのスタッフの職を守ることを決定。アトレティコ・マドリーやベティス、レアル・マドリーらも、詳細は異なるにせよ、似たような決断に至っている。

 ただし、なかにはマドリーのトニ・クロースのように、「給与を見送るのは、空の寄付をするようなもの。あるいはクラブのためになるだけだ。我々は本当に助けが必要な人々を、助けなければならない」(ドイツのラジオ局『SWR』にて)と主張する選手もいる。

 元イングランド代表ウェイン・ルーニーも、『サンデー・タイムズ』紙のコラムで、「もし政府に、看護師を助けるためや人工呼吸器を買うために資金を援助してほしいと言われれば、喜んでそうする──カネの行方がはっきりしているかぎり。ただ自分は何かを与えられる立ち位置にいるが、選手全員がそうだとは限らない。なぜ急に、選手だけがスケープゴートにされなければいけないのか」と記した。

クラブが引き受けるべきリスクとは。

 また、トッテナムのトビー・アルデルバイレルトやナポリのドリエス・メルテンスの代理人を務めるベルギー人弁護士スタイン・フランシスは、『ガーディアン』紙上で次のように綴っている(部分的に抜粋)。

「ほかのスタッフは限られた賠償金や然るべき事前通告があれば、雇用主の元を離れられる。しかしクラブが多額の費用をかけて獲得した選手には、利害関係者全員が合意しない限り、契約を全うすることが求められる。クラブが選手に減給を求めるのなら、選手もほかの勤務者と同じ条件にすべきだ。

 またクラブが取った(選手獲得の)リスクが奏功し、利益を上げたとしても、勤務者や選手には何の見返りもない。現在のように、クラブの財政面が困難に陥った時だけ、勤務者や選手の賃金を下げようとするのはフェアではない。

 それに選手の賃金が減ると、税収にも大きな影響が出る。今回、プレミアリーグは総額約5億7000万ポンド(≒770億円)もの減額を選手たちに求めたが(先週末のプロフットボーラー協会とプレミアリーグの交渉は合意に至らず)、それは英国政府に2億(≒270億円)ポンドの減収を強いることになる。人々の健康が危機に晒されている現状にもかかわらず、自分たちの財政面を最優先させるようなクラブの振る舞いは非常にわがままに映る」

【次ページ】 日本のアスリートたちはどう動く?

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