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日本版NCAAは大学スポーツを変える?
「UNIVAS」発足1年目の成果と課題。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2020/04/09 11:00
早稲田大学前総長の鎌田薫氏が、UNIVAS初代会長を務めている。
民間企業、スポーツ庁との協力。
――運動部へのサービスの充実を図る上で、KDDIやマイナビ、MS&AD、河合塾のグループ会社といった民間企業とのパートナーシップ契約も結んできました。
今年2月に、マイナビとは「リーダーズキャンプ」と称して、体育各部の新主将を集め、元ラグビー日本代表主将の廣瀬俊朗さんを講師にお招きするなど、リーダー人材育成のプログラムを実施しました。全国23の大学から19競技の新主将が集まりました。KDDIとは運動部所属学生向けのサービスプラットフォームの開発を進めていますし、MS&ADとは安全安心な環境確保における取組み、河合塾のグループ会社とはスポーツ推薦で入学してきた学生向けのeラーニングプログラムの実証実験を行っています。これらの成果が表れるのは先のことになると思いますが、こうした先進的な取り組みを、スピード感を持って行えているのは、民間企業の協力が大きいです。
――スポーツ庁にはどのように協力を求めていきますか。
そもそもUNIVASは、構想から3年間、スポーツ庁がセルモーターの役割を担いスタートしました。しかし、これからは各大学が前面に出て、必要なサポートをスポーツ庁に求めていくという関係が自然なのではないかと思います。
放映権ビジネスの展開は?
――NCAAのように大学スポーツの放映権ビジネスも展開する予定でしょうか。
この1年間でも、非常に多くの大学スポーツの大会を映像化し、配信することができました。ただ、アメリカと日本では、そもそも放映権ビジネスの土台が違いますし、大学スポーツ自体の社会的な人気も異なります。日本においては一部の人気競技を除いて、大半の大学スポーツが映像化すらされていない実態があります。日本の大学スポーツは、公式試合を競技団体が中心となって主催してきた歴史があるので、競技映像の制作、配信やビジネス化においても競技団体との連携の下で進めていく必要があります。
――近年は大学スポーツの「体育会気質」が問題になることもありましたが、UNIVASは改善に貢献できますか。
科学的な練習方法の採用など近代的な運営のできている競技や大学と、そうではない競技や大学が混在することで問題が起きていたので、UNIVASが先進的な取組みをしている競技や大学の情報を積極的に発信したり、ガイドラインを作成することなどで、大学スポーツ全体の改善を図ることができるのではないでしょうか。
――甲子園など高校スポーツに比べて、大学スポーツはメディア露出が難しい印象もあります。
大学スポーツで最も多くの国民が見ているのは、箱根駅伝でしょう。それに合わせて「学生三大駅伝」として出雲駅伝、全日本大学駅伝のメディア露出も増えてきました。このように大きな大会が複数放映されることで、国民全体の大学駅伝、大学スポーツに対する関心が高まってきました。
一方で、昔はテレビ中継されていた大学スポーツの試合が、今では注目されなくなってしまっている例もあります。UNIVASが主体的に映像化に取り組むことで、学生が自分の大学を応援しよう、みんなで参加して盛り上げようと思える雰囲気を醸成していきたいと思っています。