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スポーツマンガと舞台、謎の好相性。
テニミュとペダステの成功の理由。
text by
kuu(マンガナイト)kuu
photograph by(c)許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト (c)許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会
posted2020/04/07 19:00
マンガの世界を舞台上で表現する2.5次元の世界の筆頭といえば「テニスの王子様」である。
2.5次元の世界を確立したテニミュ。
『テニスの王子様』はその名の通りテニスの部活を描いた作品である。キャラクターが全体的に大人びているが、高校ではなく中学が舞台であることが特徴のひとつである。
ストーリーラインは簡潔で、アメリカ帰りの天才テニス少年・越前リョーマが名門の青春学園のテニス部に入部し、仲間たちとともに全国大会を目指していくというもの。
1999年に連載を開始した『テニスの王子様』は、2001年にアニメ化、2003年に舞台化(ミュージカル化)を果たしている。今でこそ女性人気作品の王道ルートだが、この流れを切り開いたのが今作である。
特に舞台化が画期的で、役者たちはラケットのみを手にし、ピンスポットと打球音で試合を行う「魅せるスポーツ」を展開した。キャラクターも原作のイメージを重視し、ルックスから歌まで余すところなくマンガの要素を取り入れた。
そんなマンガを拡張させたミュージカルは「テニミュ」と呼ばれ、その人気は不動のものとなった。上演された演目は30を優に超え、その他にもドリームライブや大運動会などの派生イベントも多数開催されており、“2.5次元”(2次元=マンガと3次元=舞台の中間)の中では最大級である。
観劇の方法は歌舞伎や宝塚と同じ。
「テニミュ」の大きな特徴として、同じエピソードを繰り返し上演し続けることがあげられる。1stシーズン、2ndシーズン、3rdシーズンと話の流れは変わらないが、それでも観客は集まる。
それは「キャストと演出方法の変化による差異を楽しむ」という観劇が可能だからである。歌舞伎や宝塚歌劇と同じ、と考えればわかりやすい。小さな違い、行間に喜びやドラマを見いだす女性たちにとっての、ある種おなじみの見方なのだ。
「私が好きなのは初代」「3代目のこの演技がいい」というように、それぞれお気に入りを見つけ、長く通うスタイルを作る。この2.5次元舞台のロングラン化はまぎれもなく『テニスの王子様』の功績であり、その地位はしばらく揺らぎそうにない。