プロレス写真記者の眼BACK NUMBER

コロナ戦時下での異様なにらみ合い。
無観客プロレスのこれからを考える。 

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

PROFILE

photograph byEssei Hara

posted2020/03/31 20:00

コロナ戦時下での異様なにらみ合い。無観客プロレスのこれからを考える。<Number Web> photograph by Essei Hara

実に30分以上も続いた藤田和之と潮崎豪のにらみ合い。日本プロレス史に残るような、奇妙な試合となった。

ネット配信の後楽園ホール、そして野外や道場も。

 配信手段を持たない団体やプロモーションは中止か強行しかないわけだが、あえて強行しても、みんな不安を抱えているから実際の集客は難しい。

 無観客でのテレビあるいはインターネット配信だけを考えれば、後楽園ホールが一番身近で整った環境にある。

 ただ、野外を想定するのもアリだろう。かつての田園コロシアムのような所があったらと思う。最近は減ったが、プロレスは暖かい時期は駐車場や広場、空き地、普通の野球場で試合を行ってきた。多摩川の河川敷なども候補としては残る。雪のなくなったスキー場だってある。ただ、人が自由に大勢集まってしまう場所は避けなければいけないから、それは考えなくてはいけない。

 じゃあ、手っ取り早く使える道場はどうかとなるが、視点を変えれば可能だろう。ただ、そんなに広い道場を持っているところはないから、戦う選手とレフェリーだけで行うというものだ。もしもの感染も最小限に抑えられる。

 無人の道場には無人の固定TVカメラ、無人のリモートコントロールのカメラが配置されている。取材のリモートコントロールのスチールカメラも取り付けられている。記者も関係者もカメラマンもこの模様は外からモニターで追うことになる。

 そんな設定が施された無人の道場に選手が順に入って来て、試合が始まる。余計なものはすべて排除されているから、道場内は異様を極めた雰囲気になる。これもレアでいいのじゃないか、と筆者は思う。

過去がヒントになることもあるのでは?

 毎日とは言わない。1週間に1回。プロレスが忘れ去られてしまわないように質の高い試合を提供する。

 1日に何試合もカードを組む必要もない。2試合でも3試合でもいいはずだ。本当に1試合だけでもいいはずだ。

 かつて、これは無観客ではないが、藤波辰巳と木村健吾が後楽園ホールで戦ったことがある。1987年1月14日。他のカードは一切なく、この1試合だけが行われたのだ。マットのクッションを取り除き、スプリングも抜いて投げ技が有効なリングだった。

 こんな時期だから、いろいろなことが思い出されるし、過去がヒントになることもある。

 ファンの前でのファイトが可能になるまで、できることなら後楽園ホールで1週間に一度、無観客でのワンマッチ定期戦というのもいいのではないかと思う。

BACK 1 2 3 4
藤田和之
潮崎豪
プロレスリング・ノア
木村健吾
藤波辰巳

プロレスの前後の記事

ページトップ