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米名門大教授が語る睡眠とスポーツ。
寝たらシュート成功率は上がる? 

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田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byGetty Images

posted2020/03/31 19:00

米名門大教授が語る睡眠とスポーツ。寝たらシュート成功率は上がる?<Number Web> photograph by Getty Images

睡眠の質はアスリートのパフォーマンスに大きな影響を与える。

理解したい時差ぼけの仕組み。

――最近は、試合直前に仮眠を取る選手も増えています。

 夜、十分に眠ることができていれば、仮眠の必要はないと考えられていました。

 しかし、最近は睡眠時間を充分確保できない選手も多いので、その考えが見直され始めています。確かに仮眠を取れば、一時的に反応性などのパフォーマンスが上がることは間違いないです。ただ、スポーツと最適な仮眠についてはまだ研究が及んでいないところが多いです。

――海外を転戦する競技の選手は、時差とも戦わなければなりません。

 1時間の時差を治すのに約1日かかるので、7時間の時差がある国への遠征であれば本当は7日以上前に現地入りするのが望ましいです。それだけ早く移動するのは、大きな大会じゃないとなかなか難しいと思いますが。

 体温などの体の日内リズムとパフォーマンスは相関関係にあります。体温が低い夜中の3時頃は、リアクションタイムが最も落ちます。時差ぼけは、時差のある地域に短時間で移動することによって体温などの固有のリズムと現地での就寝や活動時期が同調しなくなることが原因で、 1日1時間程度の修正能力しかありません。

 また、渡航地との時差の方向と幅により、時差の修正は前にずれていく場合と後ろにずれる場合がありますが、時間を前にずらすほうが遥かに辛く、その修正の速度も遅いことが知られています。こういった時差ぼけの仕組みを理解していると、現地での睡眠や競技パフォーマンスの向上に役立ちます。

負債は溜まっても、貯金はできない。

――オフの日の「寝だめ」に効果はありますか。

 実は、睡眠時間というのは足りない分が負債として溜まっていくことがわかっています。これを「睡眠負債」と呼んでいます。

 1990年代の実験ですが、健康な8人を毎日14時間、無理やりベッドに入れた実験があります。彼らの普段の平均睡眠時間は7.5時間でした。実験開始当初は13時間近く眠れていたのですが、徐々に長く眠れなくなってきて3週間後には8.2時間に固定されました。この8.2時間がこの8人が生理的に必要な睡眠時間であると言えます。ということは、普段7.5時間しか寝ていなかった彼らは1日約40分の「負債」を抱えていたことになります。

 長期にわたる1日40分の負債を返済するためには14時間もベッドに入っていることを、3週間も続けなければならなかった。つまり、1日や2日の「寝だめ」では、睡眠負債は解消されない。さらに睡眠が厄介なのは、「負債」にはなっても「貯金」ができないことなんです。また、時差調整でもそうですが、睡眠時間を後ろにずらすのは比較的簡単なのですが、前倒しするのは難しい。「今日は早く寝よう」と思っても、思い通りに寝つけないことが多いんです。

【次ページ】 良い睡眠の鍵は「最初の90分」。

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#西野精治

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