“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鈴木武蔵が“実質”3試合連続ゴール。
高木琢也&ミシャと、一歩目の質。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/03/31 11:50
鹿島との練習試合でも好調ぶりをアピールした鈴木武蔵。Jリーグ再開後の活躍を期待したい。
高い身体能力、感覚に頼ってきた。
2人の指揮官によってストライカーとしてのプレーの幅が広がった。それは同時に「どうすればゴールという結果に結びつけられるか」というより具体的な思考に結びつく。
この思考の中で彼が行き着いたのが、「身体の意図的なコントロール」だ。
「(これまでは)感覚に頼りすぎてしまっていたことは感じていました。それに気づいてフィジカルコントロールの向上に努めていのですが、よりその重要性が分かったというか。やれることが増えていくことで監督の言うことをプレーに反映できるようになったと思います」
もともと鈴木は、デビューしたアルビレックス新潟時代に慢性的な太ももの肉離れなどに苦しんでいた。それは一時期、「引退」の2文字も頭をよぎったほど。ジャマイカ人の父と日本人の母を持つ彼は、ずば抜けた身体能力と長い足を駆使して、ダイナミックなスプリントと跳躍力で勝負するタイプだっただけに、筋肉系のアクシデントが起こるのは仕方がないことだった。それを感覚でねじ伏せようとして同じことを繰り返す。
そこで2017年からパーソナルトレーナーとともに「怪我をしない体づくり」に取り組んだ。意識したのは、スプリントする際の身体のコントロールだった。
ターンやファーストダッシュの際に下半身の筋力を使って踏み出すのではなく、大臀筋や上半身の筋力を利用して身体を前に押し出すことで、下半身に余計な力を与えずにスムーズに一歩目が踏み出せるようにトレーニングを積んだのだ。
下半身の筋トレは一切しない。
「上半身から体が動くようになりました。体の動きに足がついてくる感覚でプレーできるようになったことで、より顔を上げて周りを見ながら加速することができるようになりましたし、止まる動きと動き出しがスムーズになりました。シュートの時にも筋力的な疲労を感じない状態で足を振り抜ける。これは本当に大きな成長だと思います。
下半身の筋トレは一切していません。本当にいかに上半身で動きをコントロールできるか。下(半身)なんて日々の練習をきちんとこなしていれば、自然とついてきますから」
長崎でプレーするようになってから、着実に一歩目の質が向上していた。筆者が見ていても重心移動がスムーズになり、シュートもダイナミックなフォームからの強シュートから、力の抜けたワンタッチゴールなど、フィニッシュの際の姿勢が非常に良くなった印象を受けた。それはファーストステップから体全体がついてくるようになったことで、セカンドステップ以降がスムーズになり、上体が起き上がっている状態でボールを受けるため、ファーストタッチがぶれなくなったことが大きかった。
この身体コントロールの向上と2人の指揮官のストライカー哲学ががっちりと噛み合っだからこそ、彼はブレイクの時を迎えたのだ。