“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鈴木武蔵が“実質”3試合連続ゴール。
高木琢也&ミシャと、一歩目の質。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/03/31 11:50
鹿島との練習試合でも好調ぶりをアピールした鈴木武蔵。Jリーグ再開後の活躍を期待したい。
前を向いてプレーする時間が増えた。
鈴木は2018年にV・ファーレン長崎でセンターフォワード、セカンドストライカーの2つのポジションで地位を確立。プロ7年目で初の2桁ゴールとなる11ゴールをマークした。昨季から完全移籍した札幌でもレギュラーの座を確保し、キャリアハイを更新するリーグ13ゴールを挙げた。さらに日本代表にも選出、昨年12月のE-1選手権ではA代表初ゴールも記録している。
長崎での活躍を契機にブレイクした印象だが、この活躍は偶然ではなく、その裏には「意図的な成長」があるのだ。
前線で身体を張る、そして裏に抜ける動きがこれまでの特徴だったが、そこにセカンドストライカーとしてポジションを落としてボールを受ける動き、シンプルに叩いて前線に飛び出していく動きが加わったことで、よりプレーの幅が広がっている。
「常に相手にとって嫌な場所はどこかを考えて動くようになりました。昔はどちらかというと、ボールを受けてからどうするかを考えることが多かったのですが、なるべくゴールに直結するプレーができるように、なるべくペナルティーエリアの幅の中で動いて、スペースを作りながら最後は自分が前向きの状態でゴール前に入れるように意識するようになりました」
シュートは何本外してもいいから。
この変化は間違いなく2人の指導者によるものが大きい。
その1人は当時、長崎を指揮していた高木琢也(現・大宮アルディージャ監督)だ。かつて「アジアの大砲」と呼ばれた日本を代表するパワーストライカーからクロスへの入り方、ボールの受け方、ポストプレーなど多くの要素を学んだ。中でも高木から授かったストライカーとしての心構えは、彼の成長を大きく後押しした。
「今までの監督だと『ちゃんと決めろ』、『正確にシュートを打て』と言われることが多かったのですが、高木さんは違った。『何本外してもいいから、落ち着いて打ち続けろ。シュートで慌てていたら入るものも入らないし、外して気にしていたら、また外すぞ』と言われて、それでメンタル的にかなり楽になったし、今も大事にしています。高木さんにFWとして大事なことを教わった」
もちろん精度を上げることは大事だが、シュートを打たないとゴールは生まれない。当たり前のことだが、それを実際に指揮官に言われることでストライカーとしての大きな後ろ盾となったのだろう。
そして、もう1人が現在、札幌で指導を仰ぐミハイロ・ペトロヴィッチ監督だ。ペトロヴィッチ監督もまた彼に積極的にシュートを打つことを求めた。
「ミシャさんもFWは積極的にゴールを狙えと言ってくれますし、その上で『前の選手は自分の動き出すタイミングだけでなく、時には我慢をして、味方がどこにボールを出すのかという次の展開を予測した上で動き出すように』と言われている。それは僕の中でもこれまで足りなかったところで、味方の動きを見て、予測をして、動き直しを何度もする。出し手との連携というか、コミュニケーションやすり合わせを普段の練習から積極的に取らないといけない。意識が変わることで行動も変わる。そうすることでよりボールが引き出せるようになりました」