“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鈴木武蔵が“実質”3試合連続ゴール。
高木琢也&ミシャと、一歩目の質。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/03/31 11:50
鹿島との練習試合でも好調ぶりをアピールした鈴木武蔵。Jリーグ再開後の活躍を期待したい。
増えたシュート数、枠内率も上位。
「長崎、札幌と着実に1試合のシュート本数は増えてきています。特に昨年は劇的に増えた。それは自分のフィジカルのコントロールとゴールへのアプローチの質が上がっているからこそ。特に今は出し手の質も高くて、ミーティングでも『ここでボールを持ったら、どこに動けばいいか』をチーム全体で意識できているおかげで、受け手である僕とマッチするようになった。だからこそ、今年はもっとシュートを打ちたいし、最低でも15ゴールは決めたいんです」
昨年の鈴木のシュート数はJ1リーグ3位の81本。うち枠内シュートは37本で枠内率はリーグ4位の45.7%。ゴール数と共に目に見える結果が出ているからこそ、今年はそれ以上を目指す。彼の思いはシンプルだ。
ルヴァンカップ開幕戦のサガン鳥栖戦。2-0で迎えた後半アディショナルタイム、GKク・ソンユンのロングキックから相手DFとのバウンドボールの競り合いを抜群のフィジカルコントロールで制すると、素早いターンから身体をひねるように右足一閃。強烈なボールがゴール右隅に突き刺さった。シーズン幕開けファーストゴールはまさに彼が積み重ねてきたものが全て形となったようなゴールだった。
J1開幕戦の柏レイソル戦では、1-4という劣勢で迎えた76分。中盤のルーズボールをMFチャナティップが拾って前を向いた瞬間、鈴木は相手の左CBと左サイドバックの間のスペースに右手を上げてボールを要求しながらスプリントを始めた。チャナティップからの浮き球のスルーパスが届くと、一気に相手DFを振り切って右足ダイレクトシュート。これも動き出しの質、加速力、落ち着いたシュートと、彼の進化が凝縮されていた。
そして鹿島との練習試合でのゴール。冒頭での開幕前の宣言が嘘偽りではない、自分を深く理解した上での言葉であることが証明された。
「身体は変化しているというか、フィットしてきている印象はあります。2019年の1年間は出場停止と開幕戦以外はすべて90分出た。1週間の筋膜炎の離脱だけでしたし、自分の意図するように身体が動くようになった。今年は本当に楽しみです」
「未来のことは計画通りにはいかない」
開幕前、この言葉を聞いた後に見た、3試合連続ゴール。だからこそ、現在のリーグ中断期間は歯がゆい。だが、それは彼自身が一番感じているだろう。
世界が直面しているのは未曾有の危機。いつか来るリーグ再開に向けて積み上げてきたものを崩さずに、維持、そして発展させていくしかない。
間違いなく今季は鈴木にとってもワンランク上に進むシーズンとなるだろう。気持ちを切らさないことは難しいかもしれないが、彼の覚悟はそんなぬるいものではないはずだ。以前に語っていた言葉からも、それは伝わる。
「僕はサッカーが好きだし、シンプルに負けず嫌い。常に1番になりたいという思いがあって、極端に言えばそれだけでサッカーをやっていたくらい、やるからには1番になりたいんです。もちろん未来のことは計画通りには絶対にいかないからこそ、常にひと皮剥けるべく毎日練習に励むだけです。1番になりたいので」
鈴木武蔵は今、何を思うか。