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野球ユニフォームって動きやすいの?
ミズノの開発担当者に聞いてみた。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2020/03/28 09:00
野球ユニホームのプロフェッショナル、ミズノの松井克徳さん。この世界、深い。
ベルトって邪魔じゃないですか?
相手に「うわっ、強そう」と思わせる見栄えと、動作のバランス。それを考えることが仕事の醍醐味なのだろう。ちなみにユニフォームで特に重要なのは、投げる・打つという動作の重点である肩周りと、前後左右に動く股関節周りのカッティングなんだという。
「肩周りの場合は、立体的な裁断で仕上げることによって着圧がかからず、ストレスなく肩を上げられるようになっています。肩を上げるスポーツはバレーやバドミントン、ハンドボールとありますが、それらの競技はシャツをベルトで押さえることはないですよね。
ただし野球はベルトで固定するので、シャツを中に入れて固定した状態でも動きやすく作るのがとても重要なんです」
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なんと、ベルトがあることを前提に野球のユニフォームは進化しているのか……と感心はするが、そもそもベルトって邪魔じゃないですか?
こんなくだらない質問にも松井さんは笑顔で「骨盤をしっかりと後ろで固定してあげる製品を出していますし、ベルトもより一層改良していかなければ、と考えています。また、ユニフォームにベルトのなかった時期もあったのですが、ベルトを締めることで『野球をするぞ!』と気が引き締まるものだと思うんです。プロも学生の選手も、ベルトがなかったらちょっと不安だと思いますよ」と話してくれた。
つまり、ベルトはスパイクやグローブなどと同じ「ギア」として考えているようだ。逆に言えばベルトなしでプレーしている時代があったのだから、もし“ベルト未着用”の最強チームが現れたら、ユニフォームの定型が変化するかもしれない。
ユニフォームの技術がスーツに流用?
ちなみにこの取材に同席していた広報担当の堀井洋輔さんによると、「野球のユニフォームのテクノロジーは意外なところに生かされているんです」とのこと。
それは社会人の“戦闘服”であるスーツだ。ベルト、重ね着などスーツとユニフォームは共通点が多く、前述した肩回りなどでの動きやすさを応用しているそうだ。レースカーと市販車みたいな関係性が両者にあるとは想像もしなかった。