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野球ユニフォームって動きやすいの?
ミズノの開発担当者に聞いてみた。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2020/03/28 09:00
野球ユニホームのプロフェッショナル、ミズノの松井克徳さん。この世界、深い。
昔はダボっと、今はピタッと。
「弊社と野球の歴史から説明すると、ボールを作り始めたのが1913年なので、100年以上の歴史があります。ユニフォームについても日本で最も早く作り始めました。その当時は帆布、いわゆる織物のユニホームなので、ほぼ伸びのない生地なんですね。
ただプレー中に高いパフォーマンスを発揮したい、という選手の要望を聞きながら改良して、軽さを求めたメッシュ性、ストレッチの利いた伸縮性のよいものを21世紀に入ってから提供するようになりました。『プレーする時の動きやすさ』という定義は時代によって変わるんですが、それに伴ってシルエットなども変化しているんです」
説明しながら、各年代のユニフォームを並べてくれた。なるほど、昔のユニフォームは生地が伸びない分だけダボっとしたつくりになっている。一方で今は身体にピタッとフィットしたタイプが増えている。
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「カッティングのパターンもバリエーションが増えたことで、身体を締め付けた方がパフォーマンスが上がる、余分なゆとりがない方が動きやすいなど、開発技術の進化によって形は変わってきました」(松井さん)
ユニフォームにも流行が存在する。
ちなみにシルエット、機能性だけでなくファッション的なトレンドも反映されるらしい。
「私が高校球児だった20年ほど前で言えば、ゆったりしたサイズを着て身体を大きく見せるユニフォームが流行っていたんです。でも現在は逆に肉体のラインをハッキリさせることで“強そうに見せる”という考えがトレンドです」
なんと、動きやすさだけじゃなくて見栄えもユニフォームに反映されているのか。考えてみればアメリカの大リーグを見てもユニフォームがピチッとしてきた気がする。すると松井さんは日本のプロとアマの違いについてもこんな風に教えてくれた。
「プロ野球の場合はちょっと丈を長くしたり、ダボっと着てみたり……というルーズに着るという個性の出し方が多いです。一方で学生野球、特に高校野球は、だらしなくないようにキチっと着る流れがあります。
学校によっても微妙な差があって、例えば甲子園で勝ち進んだ強豪校がピチッとしたサイズ感でユニフォームを着用していたら、その後に全国的な流行になったりもします。やっぱり強い学校への憧れはあるんですよね。決められたルールの中で、どういう風に自分たちの色を出していくか、というのを学生たちは考えているんです」