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3.11と東北スポーツの9年。楽天に
釜石ラグビー、J3八戸、いわきFC。
text by

川端康生Yasuo Kawabata
photograph byAFLO
posted2020/03/11 08:00

2019年ラグビーW杯、フィジー対ウルグアイ戦前の光景。世界に向けてサポートしてくれたことの感謝を発信した。
双葉郡6町2村をホームタウンに。
当初はぎこちなさもあった地元との関係もあっという間に良化。行政をはじめ、商工会、地域団体が推進協議会を作り、いわきFCを支援するというより、いわきFCを生かした「新たな町作り」構想へと昇華しつつある。
先月(Jリーグ加盟のために必要な手続きである)「百年構想クラブ」にも認定。今季の成績次第では一気にJリーグに到達する可能性さえある。
そして、このタイミングで双葉郡6町2村(広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)もホームタウンに加えた。
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言うまでもなく、地震と津波に加えて、この地域は原発事故の被害も受けた。
自然災害は発災直後がボトムで、そこから復旧、復興と(時間はかかっても)進んでいけるが、放射能災害では最初の一歩を踏み出すことさえ容易ではない。結果、被害の規模も被災の範囲も深くて広かったから「東北」と一括りにできない大災害の中でも、とりわけ異質なエリアとなった(いまだに立ち入りが制限されている区域が残っている)。
さらに言えば、「アンダーコントロール」なはずの原発は、いまだに内部の様子さえよくつかめていない。当初の工程表では来年には完了するはずだったプールからの燃料取り出しは10年ずれ込むと言われている。その先には難関のデブリの取り出しも待っている。
作業のスケジュールは頻繁に書き換えられ、要するに廃炉作業は結局のところいつ終わるかわからない状態なのだ。もちろんその進捗状況に、この地域は人口も経済も翻弄され続けることになる。
いわきFCはそんな難しいエリアをホームタウンにすると決めたのだ。
奮い立たせる存在が不可欠だから。
だから僕はいわきFCに注目し、期待する。そんな長い道のりを歩く人たちにこそ、力を漲らせ、奮い立たせる存在が不可欠だと思うから。地域をまとめ、前へ進む力をもたらすシンボルの登場を願うからである。
あれから9年が経った。もちろん復興にも日常にも節目などあるはずがない。被災したすべての人には、今日が終われば、また明日がやってくる。
そして、これまでの9年間そうしてきたように、9年と1日目を生きる。
