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山田直輝、湘南へ完全移籍した本心。
10番の自覚と、浦和の18番への謝罪。
posted2020/03/10 08:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Getty Images
2月21日のJ1開幕戦。湘南ベルマーレのファン・サポーターに挨拶を済ませたあと、真っ赤に染まったアウェー側のスタンドへゆっくりと歩を進めた。客席を見渡すと、今季の浦和レッズにはない背番号18のユニホームがいくつも掲げられていた。あちらこちらから温かい拍手が送られ、大きな声も飛んだ。
「ナオキ、頑張れよ」
湘南の山田直輝は、BMWスタジアムのトラックを歩きながら笑顔で手を振っていたが、胸の内は複雑だった。
「うれしさもあったし、有り難いとも思いました。ただ、申し訳ない気持ちのほうが強かった。数ある中から僕の番号を選んでユニホームを買ってくれた人たちがあんなにいたのに、チームに貢献できなかった。僕が浦和で活躍したのは10年くらい前ですよ。それなのに信頼してくれて……。本当に悔しい。だからこそ、応援してくれている人たちに湘南で元気に活躍している姿を見せないといけないと思っています」
「もう浦和に帰る道はない」
12歳から浦和レッズのアカデミー組織で育ち、18歳のときにトップチーム昇格。2009年から2019年までの間、期間を置いて3シーズン半、湘南で過ごしたものの、在籍は浦和のままだった。昨夏、湘南から2度目のレンタル移籍の打診を受けたときには、すでに腹を決めていた。
坂本紘司スポーツダイレクターに「背番号10をつけさせてください」と志願。その頃から「責任」と「覚悟」という言葉を使い、思いをにじませていたが、レンタル期間中はあえてそれ以上口にしなかった。ただ、いまだからはっきり言う。
「あのとき、もう浦和に帰る道はないと思っていました。湘南への完全移籍のことを考えていました」
心は湘南にあった。
「ここで必要な選手だと思ってもらいたかった」