令和の野球探訪BACK NUMBER
NPB初の下部組織・楽天リトルシニア。
ただのエリート集団ではない理由。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/02/19 19:00
川岸監督のもと、伸び伸びと野球に取り組む東北楽天リトルシニア。目指すは東北勢初の全国優勝だ。
「調子に乗っている」と言われたことも。
選手たちに話を聞いても印象的なのは主体性だ。
新3年生で主将を務める齋藤陽貴は楽天シニアでの成長を尋ねると「視野が広がり細かいところにも気付けるようになり、人前で発言もしっかりできるようになりました」と、真っ直ぐな目と背筋で答えた。
学校生活では楽天シニアというだけで「調子に乗っている」と言われたこともあったというが、「そう見られることもあるからこそ、普段の学校生活や先生への態度が大事」と、成績表には5段階で4と5しかない。生徒会長も務めて野球で培ったリーダーシップを生かしている。
山形県尾花沢市から車で片道1時間半から2時間近くかけて通う井上雄斗も「人前でしっかりと喋れるようになりました」と話す。母・美和さんもそう口をそろえ、「周りのレベルが高く落ち込む時もあったが、やりがいを持って切磋琢磨しているようです」と微笑む。
送迎は平日2回と週末にそれぞれあるが「時には弱音も話してくれるし、車の中でいろんな話ができるので」と、その時間も有意義に使っている。どこにでもある親子の関係が、より密接になっている時間とも言えるだろう。
英才教育を受けるエリート集団ではない。
チームとしての目標には日本一や1人でも多くの好選手を輩出することもある。だが、決してそれだけではない。川岸監督も「優勝の景色を当然見せてあげたいですが、大切なものは失いたくありません」と力を込めるように、野球をする前に大切なものや野球を通して学べることも指導理念に掲げる。
何も知らずそのユニフォームと名前を見れば、彼らを「野球の英才教育を受けるエリート集団」と思うだろう。
だが、実際に足を運んでその様子を見てみると、1人ひとりの中学生がスタッフや家族の協力も得ながら、プロと同じユニフォームを纏う重みや責任とも向き合い、野球を通して懸命に成長を目指している姿があった。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。