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NPB初の下部組織・楽天リトルシニア。
ただのエリート集団ではない理由。
posted2020/02/19 19:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
仙台市泉区にある東北楽天ゴールデンイーグルスの二軍施設・ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉。時折、粉雪も舞う寒さの中、20名弱の少年たちが白い息を吐きながらグラウンドを駆け回る。
楽天球団は野球教室やチアリーディング教室も行うアカデミーの中に、プロ野球チームとして初めてとなる中学硬式野球クラブチーム「東北楽天リトルシニア」を創設している。
2014年に一般財団法人日本リトルシニア中学硬式野球協会に加盟、2015年から活動を本格的に始動し、セレクションを経て選ばれた1学年10名の精鋭たち(※)がプロ経験者を中心とした指導陣のもとプレー。憧れのプロ野球選手と同じユニフォームを纏って切磋琢磨している。(※現在の新高校3年生となる1期生は20人いたが、2期生からは1学年10人まで。東北連盟からの要請もあり、一極集中を防ぐためにも人数制限がかけている)
センバツにはOBが数名出場予定。
東北楽天リトルシニアの過去最高成績は全国大会8強が2回。高校野球だけでなく中学硬式野球の世界でも東北勢の優勝はなく、優勝旗は「白河の関」を越えていない。それだけに、日本一を志す思いは強いが、そう簡単ではないのも事実である。
「能力や実力は負けていないと思うんです。でも強豪チームは同学年40人くらいの中から9人に選ばれた“底力”がある。ウチはそれが9人いて、9人出るような状況。なんとか底力を出させてあげたいんですよね」
そう語るのは創設以来チームに携わる川岸強監督(2017年まではコーチ/元中日、楽天投手)だ。今春のセンバツ甲子園には1期生5人らが出場予定など育成実績も残し始めているが、創設当初の反省、そこから改めて気づかされたことも大きかったと振り返る。
「指導者の僕らも最初はどうしてもギラギラしているから、すぐ(ポイントに)気づいちゃうし、(口を出して)指導をしていたんです。でも“ああしろ”“こうしろ”と言われたことより、(選手が)自分で“こうかな”と直せる方が絶対強いんです」